映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、タレント・女優の浅田美代子が、45年ぶりの主演作となった映画『エリカ38』について、プロデューサーをつとめた故・樹木希林さんと本作で共演した思い出について語った言葉をお届けする。
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浅田美代子は公開中の新作映画『エリカ38』に主演。自らを三十八歳と偽り、口八丁で人々を騙していく実在の詐欺師役を演じた。プロデューサーを務めたのは、浅田のデビュー時からの間柄である樹木希林だ。
「これは希林さんが企画してくれたんです。凄く仲がよくて、いつも一緒にワイドショーを観たり、電話で事件の話とかをしていたんですよね。それで、ご老人を連炭で──という事件とかがあると、『こういうの、美代ちゃんいいんだよね』って言われていたのね。その度に『いや、でも私にはこういう役は来ないでしょう』って答えていました。
今回も元になった事件を見た時に『美代ちゃん、これあんた、やれるわよ』と言われたんですが、『来ないんじゃない』って、いつもの感じで終わっていたんです。そうしたら少しして、『話を進めたから』って連絡が来たんです。それでビックリして。
仲が良かったんで、私の中にある毒を知っていてくれたんですよね。それで、こういう役をやらせたかったんだと思います。
役者がいろんな役をやってみたいと思うのは普通のことです。でも、私はどちらかというと『釣りバカ日誌』の『みち子さん』とか、そういうホワンとした役が多かったんで、私には来ないと思っていたんですよ。それを希林さんが自らやってくれて。撮影をやっている間も『いいわよ。美代ちゃん、できるわよ』と励ましてくれました」
劇中で人を騙す際の浅田の弁舌は堂に入っており、これまでのイメージを脱却した詐欺師ぶりをリアルに演じていた。