そこかしこで若者が行列をなしているタピオカだが、実は庶民にとって案外身近な食材である。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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台湾発のタピオカ人気が止まらない。若者や学生の集まる町では続々とタピオカミルクティーを提供する業態の店舗が立ち上げられている。
原宿・表参道あたりを歩いてみると、確認できるだけで30以上の店でタピオカドリンクが売られている。その熱は引きをも切らず、新宿、池袋、上野などの繁華街や高田馬場などの学生街でも、今年に入ってからも新店がオープンするほど。
こうして可視化されると「タピオカ」がいきなりスターダムに駆け上がったかのように思えるが、以前にも1990年頃、バブル終盤に一時的にタピオカデザートがブームとなったことがあった。さらに言えば、ブーム以前からタピオカは庶民の食のなかのそこかしこに使われてきた。
象徴的な食品が「うどん」である。とりわけ冷凍うどん界において、タピオカはコシを出すための加工でん粉として欠かせない素材となっている。
「うどんの命はコシ」と言われることが多いが、コシだけがうどんの味ではない。コシ、粘り、つるみ……食感だけでもいくつもの要素がある。
例えば、小麦粉由来のでん粉を鍛えたうどんはいったん茹でて心地いい食感になったとしても、その後低温で保存されるとぼそぼそした食感に変化してしまう。これはでん粉の「老化」によるもので、てっとり早く解決するにはでん粉の種類を変えるのが効果的だと言われる。
タピオカでん粉を原料とする酢酸デンプンなどの加工でん粉は粘度が高く、老化しにくい「耐老化性でん粉」と言われるもの。日本人が麺類において重視すると言われる小麦粉の「粘弾性」を安定して出すことができる素材で、麺に必要なもちもちとした食感、のど越しのいいつるみ(滑らかさ)、白さなど、うどんにうってつけの素材とされている。
原料小麦粉の2割程度、タピオカ由来のでん粉を入れることで、冷凍うどんはもちもちとした食感を強調した、よりうどんらしい食感になるという。こうした使い勝手のよさが重宝され、タピオカ由来に代表される「耐老化性でん粉」は冷凍うどん以外にもそば、ラーメン、パスタなど多くのチルド麺に使われている。