「政治家は清貧たれ」とはいわない。たとえ資産家の政治家でも、庶民の生活実感、年金不足への危機感を感じ取ることができるなら、国民は政治に期待を託すことができる。
だが、住居費も交通費も税金で賄われ、飲み代は政治資金、金銭感覚が完全に麻痺した政治家たちに、国民の痛みは分かるまい。
安倍首相は岸信介・元首相を祖父に持ち、経済的に恵まれた家庭で育った。成蹊大学時代は赤いアルファロメオを乗り回していたが、アーチェリー部に所属して体育会本部の会計局長を務めたことで“庶民の金銭感覚”に触れたことがある。
母校・成蹊学園の広報誌には、在学当時の安倍氏の写真と体育会役員紹介の文章が再録されている。
〈体育会の「火の車」の台所をあずかり、四苦八苦。しかしこの経験は将来政界でもきっと役立ちますよ〉
だが、同窓生の期待は裏切られたようだ。首相になった安倍氏の金銭感覚は庶民から大きくズレていく。
アベノミクスで実質賃金が下がったことを国会で批判されると、「景気回復でパートが増える」と反論し、こんな“たとえ話”を持ち出した。