9歳の時、テレビのオーディション番組で美空ひばりさんのモノマネをして優勝したことをきっかけに、歌手デビューを果たした小林幸子(65)。美空ひばりさんは芸事に対する厳しい姿勢でも有名だったが、小林のモノマネを高く評価したという。小林幸子がデビュー55周年の軌跡を振り返る短期集中連載の第3回では、美空ひばりさんが「一度だけ教えてくれたこと」を紹介する。
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「創造とは記憶である」。これは「世界のクロサワ」こと、映画監督の黒澤明さんの言葉です。黒澤監督が言うには、何もないところからものは創り出せない、ということらしいのです。
生まれてから今まで、経験したことや本を読んで記憶に残ったことが、知らず知らずに蓄積されていって、それがふとしたきっかけで呼び覚まされて、創造されていく……。黒澤監督の言葉は、すべての事柄に当てはまると、私は考えています。
芸事の世界の言葉で言い換えるなら、「プロの技は見て学べ」。最初からオリジナルの歌い方ができる歌手なんて、存在しません。皆、少なからず誰かのマネをして、それを自分の中に取り込んで血肉にしていくのだと思います。
私自身、デビューのきっかけは「モノマネ」です。TBSのオーディション番組『歌まね読本』に、かつて歌手になりたかった父が、勝手に応募していました。
9歳の時のことです。番組のタイトル通り、歌マネを競う番組で、歌ったのは、美空ひばりさんの歌。この番組のグランドチャンピオン大会で優勝したことで、私は歌手デビューを果たします。
当のひばりさんからは「お幸」とかわいがられ、「お幸のモノマネがいちばんいい」と褒めていただきました。でも実際は、ひばりさんの「ここの節回しを盗もう」と思ってマネしてみるのですが、絶対にひばりさんと同じにはなりません。