明治期に日本初の鉄道が開業した東京では、現在までに様々な路線が敷設され、都市の形成を支えてきた。そんな鉄道都市の歴史に触れられる遺構が至る所に残っている。「鉄道遺産」のなかから、いくつか紹介する。
■旧新橋停車場
明治5(1872)年9月12日(グレゴリオ暦では10月14日)に日本初の鉄道路線の起点として開業した新橋駅の、跡地に建設された文化施設である。
東京駅の開業後は汐留貨物駅となって明治期の建物は解体されたが、1995年から始まった再開発事業(現在の汐留シオサイト)に伴う発掘調査で、跡地から駅の遺跡が発見され、国の史跡「旧新橋停車場跡」に指定された。JR東日本は、保存のため遺跡は埋め戻し、その上に、開業当時の駅舎を復元した施設を新築し、2003年にオープンした。
内部には鉄道歴史展示室が設けられ、旧新橋駅と日本の鉄道の歴史を紹介している。1階の床は一部がガラス張りで、新橋駅の遺構を見ることもできる。建物裏手には、起点を示す「0哩(マイル)標識」と線路が、当時の位置そのままに設置されている。
■東京駅・丸の内駅舎
旧新橋駅に代わる東京の玄関口として東京駅は、大正3(1914)年に開業した。昭和20(45)年の空襲で3階が焼け落ち、仮復旧のまま戦後も現役駅舎として使われていたが、原形に戻す工事が行なわれ、2012年に完成。往年の優美な姿が甦った。国の重要文化財にも指定されている。
主な工事内容は、3階部分と丸屋根の復旧。残っていた「赤レンガ」の構造を保存、維持しつつ、欠けた部分も鉄筋コンクリート造りの上に化粧レンガを張るなど、建設当時の材料やデザインを極力守った上で復原が行なわれた。天然スレート葺きだった屋根は仮復旧時に鉄板に変わっていたが、これも元の素材に戻されている。
北口、南口の丸屋根の内側にあたるドームの天井も、一部残存していた部品を活かし、創建当時の装飾を再現している。改札口前のドーム天井では、八角形の各コーナーには8羽の鷲のレリーフが取り付けられている。また、ドーム内のコーナーには、干支の方位に従って十二支のうち8つの干支の彫刻が配置されている。