高齢ドライバーによる暴走事故が相次ぎ、「高齢者は免許を返納すべき」という空気が広まっているが、地方で車は“生活必需品”だ。運転を続けるのか、やめるならいつ、何をきっかけにやめるのか。超高齢社会が抱える難問に挑む病院が高知市内にある愛宕病院である。
同病院では、日本初の「自動車運転外来」が2017年10月から解説されている。院内では認知機能の診断から運転能力向上のリハビリまでセットで受けられる。MRI検査、ドライブシミュレータを使った検査、高次脳機能検査という3つの検査結果を総合的に判断して担当医師である朴啓彰氏(脳神経外科医。高知検診クリニック脳ドックセンター長)が運転の「適応」「不適応」を判定する。
リハビリは、患者ごとに異なるプログラムが組まれる。同院の作業療法士、沖田学氏はこういう。
「個人の認知機能を評価し、運転操作を間違える方には記憶機能を、信号や標識を見落とす方には注意能力を回復させるリハビリを中心に行ないます。運転中は体を動かしながら、目や耳から入ってくる情報を記憶し、処理しなければならないので、基本は『何かをしながら別の何かをする』というリハビリです。場合により、自動車教習所で実車による運転指導も実施します」
リハビリは1回1~2時間の通院方式で、頻度は個人の自由だ。ただし、警察から受診義務を課されて、「不適応」だった人のみ、1か月で8回のリハビリで能力が向上しなければ免許返納か停止となる。
運転外来はこれまで26人(男性21人、女性5人。平均年齢79.3歳)が受診している。リハビリまで受けたのが13人。回復しないために免許返納したのは2人、停止が2人、未定が1人。残り8人は認知能力が上がって、免許の更新ができたという。