カルロス・ゴーン元会長逮捕の余波もあり業績悪化に喘ぐ日産自動車だが、先行するEV(電気自動車)開発では他メーカーを圧倒している。年初に発売した「リーフ」の高性能版はEVの弱点だった航続距離を大幅にアップさせているが、果たしてその実力は本物なのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が試乗レポートする。
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カルロス・ゴーン前CEO(最高経営責任者)の肝煎りでEV戦略を推し進めてきた日産自動車。EVそのものの難しさはともかく、EVを普及させるための策を一番打ってきたことは確かだ。
全国のディーラーの過半に急速充電器を設置し、1か月2160円という出血大サービス価格で使い放題というサービスを展開。最近はこれまでの約2倍に相当する最高出力90kWの最新型充電器の設置も少しずつ始まっている。
日産がその最新の充電器に対応したEVを発売したのは今年1月。主力モデルであるCセグメントコンパクトEV「リーフ」のバッテリー容量を標準型の40kWhから62kWhへと1.5倍に増やした「リーフe+(イープラス)」だ。
果たしてその使い勝手はどうか。日産グローバル本社のある横浜から九州の南の果ての鹿児島まで約1500km、あちこちを見物しながら走ってみた。筆者は昨年、ほぼ同じルートを標準型の現行リーフで走っているので、どう変化したかも観察してみた。
実際にイープラスで鹿児島まで走破してみた総評だが、標準型に対するアドバンテージは予想以上のものがあった。片道1500kmという距離になると、もちろん何度も充電しなければならないことに変わりはない。鹿児島到着までの急速充電回数は7回半(半は15分充電)と、延べ15回を要した標準型に対して文字通り半減した。
まだ7回半も? と思う人も多いことだろう。しかし、ドライブを貫徹してみた実感としては、1回30分の充電が7回と14回では感覚がまるで異なる。いいとこ「準急」くらいであったのが、「急行列車」になったような気分だ。