今年の安田記念までの平地GI・12レースでは、勝ち馬の半数が、いわゆる“一口馬主(クラブ馬主)”の馬。馬代金や毎月の預託料を共同で負担、口数に応じて賞金を受け取るという日本独自のシステムで、いまでは5万人ほどの会員がいるという。競馬歴40年のライター・東田和美氏が、一口馬主として競馬に加わる楽しさについて考察する。
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たとえば今年の桜花賞を勝ったグランアレグリアは、1歳時にサンデーサラブレッドクラブから総額7000万円、1口あたり175万円で計40口募集された。会員は馬代金のほか、月々1万~3万円程度の預託料(維持会費)や保険料や会費などを支払うかわりに、獲得した賞金から調教師や騎手への進上金、税金や事務経費などを差し引いた額の40分の1を受け取ることができるのだ。賞金1億円(別に付加賞金などがある)を獲得した場合、1口あたり手取りでおよそ140万円が支払われる。
1人で1頭を持つのは、馬主資格取得を含めてハードルが高いが、大勢で持つならば可能というわけだ。口数にしてもクラブによって40口から最高1万口まで多彩。システムの詳細や収支の概略については、各クラブのHPを参照されたい。
募集する側にしても、出資者が多ければ多いほど、高額でいい馬を揃えられるし、頭数や勝利数が増えれば育成場などへの設備投資もできる。厩舎サイドとしても、預託料などのやりとりがビジネスライクにできるし、多くのファンに支えられている事実は励みになる。なかには「馬主の顔が見えない」と敬遠する調教師もいるが、もはや日本では、クラブシステムなしに競馬を施行していくのは不可能だ。
平成元年のオーナーランキングのベスト10でクラブ馬主は社台RH(社台サラブレッドクラブ)だけだった。3年になると「マイネル」でおなじみのサラブレッドクラブ・ラフィアンがランクイン、新馬戦で強さを見せて勝ち星を増やしていくようになる。その後も日高の牧場を中心にしたユニオンオーナーズクラブ、外国産馬を積極的に導入した大樹レーシングクラブなどが続々台頭、近年ではノーザンファームの馬を中心にしたサンデーR、キャロットクラブ、シルクホースクラブなどが上位に君臨、昨年はベスト10に7つのクラブがランクインしている。今年の安田記念では7頭のクラブ所属馬が出走、1着から3着までを独占した。