ボクシングの亀田興毅、大毅、和毅の三兄弟とその父、史郎氏は、かつては間違いなく日本中から注目を浴びる家族だった。毀誉褒貶が激しかった彼らは今、かつて活躍したテレビよりも、ネットでその姿を頻繁に見かける。那須川天心との特別試合がネット中継された長兄の興毅は、AbemaTVのスペシャルマッチに欠かせない存在だ。そして父の史郎は、YouTuberとして13万人超の登録者を抱えている。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、テレビスターだった亀田家がネットで放つ存在感について考えた。
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6月22日、AbemaTVにて『1000万円シリーズスペシャルマッチ 那須川天心vs亀田興毅』が配信された。個人的に気になったのは、試合内容よりも興毅のトレーナーを務めていた父・亀田史郎の存在。久しぶりに本職をやっているところを観た。
亀田家を長年ウォッチする僕からすれば、現在の史郎はトレーナーよりもYouTuber。ボクシングよりも料理動画に熱を入れるオッサンである。2018年1月に『亀田史郎チャンネル』を開設して以降、週1本ペースで動画を公開中。親元を離れた三兄弟の代わりに史郎を相手するのは末っ子長女の姫月(ひめき)である。
約10年前、亀田史郎といえば日本人で誰よりもアンチを持つ炎上の権化だった(オーバーな表現ではなく)。しかし、姫月とのやりとりを観れば一目瞭然。この人、元を辿れば子供を誰よりも愛するヤンチャな親父である。
スポーツであるボクシングとケンカを混同した結果、大きな混乱を招いてしまったが、素の表情はすこぶる柔和。コメント欄でも今の史郎は絶賛されている。
チャンネル登録者数13万人を抱える中堅YouTuberとなった史郎。しかし、これは意外なことでもない。亀田家とはメディアを上手に活用し、人気を獲得したパイオニア。三兄弟のボクシングスタイルは攻撃型、守備型のいずれでもない。言うなれば劇場型である。
今回のスペシャルマッチでも観られたが、亀田家にとって試合よりも重視されるのが物語。ファミリヒストリーには、成り上がり、兄弟の絆、親子鷹といった日本人が好む浪花節が詰め込まれる。
今回の那須川vs興毅でも亀田家のストーリーが重厚に語られた。3分3ラウンドの特別ルールで争われた試合は、インターバルを含めても最長11分。比べて、試合前に流れるドキュメンタリーは4時間という大河っぷり。この前フリの長さこそ、全盛期の試合を放送していたTBSから続く伝統である。
いつまでたっても試合が始まらない。それでも高い視聴率を誇った亀田家。得意技は「ボクシング界を盛り上げるためや!」といった隠れ蓑を使った対戦相手への挑発行為だった。