芸能

杉野遥亮『スカム』が挑む「詐欺に染まる若者のリアル」

番組公式HPより

 社会派ドラマが“刺さる”時代だ。問題提起のありようは、ヒットか否かを分けるポイントにもなっている。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がレポートする。

 * * *
 知りあいの若者が「日経225先物取引で誰でも勝てるツール」のデータが入ったUSBを、何と「50万円」という大金で買わされてしまいました。実は首都圏の大学生や若い人たちの間で蔓延している、商材売りつけトラブル事例の一つらしい。USBを友達に売れば5万円入るという悪質なマルチまがいのようで、学生ローンによる多額の借金だけ残った人も多いというのです。

 いったいなぜ、そんなものにひっかかってしまったのか。当人に話を聞いてみると、彼の口から出てくるのは不安ばかり。「コツコツ真面目に働いても10万円代の給料しかもらえない」「将来が不安」「金がなければどうにもならない」「一気に稼ぐ方法がないか」。

 特に最後の一言が印象的でした。

「今、安倍首相が副業するように言っているの、あれ本当ですよね?」

 国までが副業を推奨する時代。だから、先物取引を副業にと思ったらしい。

 社会経験の少ない20代の若造が、大金を借り株の先物取引で利益を上げる? その思考の飛躍に驚かされますが、まさしくこれが今の社会の現実の断片です。

 経済的に苦しく未来に夢がなく、少しでもラクして「勝ち組」になりたいと短絡的な願望を抱きドツボにはまる──そんな構図が透けて見えてきました。

 今週スタートした杉野遥亮主演『スカム』(TBS火曜深夜1時28分・MBS日曜深夜0時50分)は、その意味でまさに時宜を得た社会派ドラマです。

 若い世代の経済的焦燥感を映す鏡のようであり、中年視聴者にとっては新手の犯罪の内実を詳細に知るという意味で好奇心が刺激されますし、自分の子供世代が抱える危機感も見えてくる。

 一方、犯罪集団のターゲットとなっているリッチ高齢者層の視聴者は、犯罪の手口がわかり生活防衛手段にもなりうるという、実にスリリングでヒリヒリする作品に仕上がっています。

 原作はルポライター鈴木大介著による『老人喰い』(ちくま新書)。なるほど、この迫力は現場取材から来ているのか。詐欺に走る若者の実態を克明に取材したルポだけに、ドラマの中身も詳細でリアル。そしてどこか滑稽。現実とは、そういうものかもしれません。特に犯人たちが複数の役を演じ電話口で相手を騙す「寸劇」詐欺など、ドラマ内ドラマとして浮き上がるあたり絶妙です。

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン