国内

所沢中2刺殺事件 被害者の実名報道は妥当だったのか

実名報道がもたらす影響は大きい(写真はイメージ)

 ネット社会の到来によって、情報の持つ意味、価値は変化している。コラムニストのオバタカズユキが、はからずも起きた痛ましい事件について考察した。

 * * *
 7月5日、埼玉県所沢市で、中学2年生の男子生徒が同級生に刃物で刺されて亡くなる、という事件がおきた。報道によれば、加害者宅で期末テストの勉強を一緒にする予定が、「教科書のことで喧嘩になった」とのこと。〈県警は、これまでのところ学校内で2人のトラブルなどは確認していないとしている〉とも報じられた。

 中学生が同級生を殺めてしまう事件は、これまでも幾度となく発生している。ありふれた事件とまでは言わなくとも、前代未聞の異常な事件というほどのものではない。報道に対するネット上の反応も、わりと落ち着いた感じだった。

 ただし、この事件には当初から引っ掛かりを覚える点もあった。事件そのものの内容ではなく、事件報道の仕方に疑問を感じたのである。ここでは「△△△△」という伏字を用いるが、殺人の疑いで送検された14歳は少年法に守られ匿名扱いだったものの、殺された被害者の13歳のほうは実名報道だったのである。

 被害者なのだから実名でも問題はないか。いや、そうは一概に言えないだろう。この事件の場合、「教科書のことで喧嘩になった」ことから刃物沙汰になってしまったようだが、そこには二人の中2生同士の間になんらか問題のある関係性が存在したに違いない。どんな関係性だったにせよ、殺人が許されないのは当然だとしても、そこに至るまでの過程で一方的に加害者が悪く、被害者には何の問題もなかったということは考えにくい。

 一般論として、というか、常識的に考えて、喧嘩には双方の言い分があり、どちらにも非があって当然なのだ。だとしたら、被害者の実名を明かすのは危険ではないか、と、一報に接してまず思った。

 そして、それから3日後の7月8日、以下のような報道が多くの媒体で流れた。

〈殺人未遂容疑で逮捕された同級生の少年(14)=殺人容疑で送検=が「以前教科書を隠され、問い詰めたが否定されたのでけんかになった」という趣旨の供述をし、△△さん(記事中は実名)とのトラブルについて学校に相談もしていたことが、捜査関係者や市教育委員会への取材でわかった〉(朝日新聞デジタル)

 まずい流れである。被害者が加害者にいやがらせをしていた、加害者はそれに悩み学校にも相談していた、と読める報道内容だ。つまり、殺されたほうにも問題があった。そのこと自体、別段、不思議ではない。だが、その彼はすでに実名報道されている。匿名の加害者よりも個人情報が詳細に明かされており、赤の他人である読者の好奇心やもろもろの感情を喚起しやすい。

 案の定、この二段階目の報道を受け、ネット上での反応の風向きが変わった。例えば、以下のようなツイッターの書き込みが急増した。

〈△△△△って奴が逮捕された少年をいじめてたらしい。いじめてたなら刺されて死んでも文句いえないね。てことでざまぁ〉
〈所沢の中学生刺殺事件だけど、どうやら被害者はイジメっ子だったみたいだのう。 殺しちゃった方の罪は罪で変わらないけど、圧倒的被害者面してた被害者の両親には巨大なブーメランだな。 イジメはするだけで殺人未遂と同等だからな〉

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン