国内

「漫画村」関係者逮捕が意味すること 中島博之弁護士の解説

漫画村運営に関与とみられる男も国内で逮捕(時事通信フォト)

漫画村運営に関与とみられる男も国内で逮捕(時事通信フォト)

 2018年4月まで接続できた海賊版サイト「漫画村」の運営者が、7月7日、フィリピン入国管理局に拘束された。日本へ強制送還され次第、著作権法違反の疑いで逮捕される予定だ。さらに10日、漫画村運営に関わっていた東京都内在住の男女2人が著作権法違反容疑で逮捕された。被害額が約3200億円という推計もある漫画村の運営者たちが逮捕されたことは、今後の海賊版摘発にどのような影響を及ぼすのか。米国のサーバ提供会社の通信データから漫画村の運営者情報を特定し、刑事手続も進めていた中島博之弁護士に聞いた。

 * * *
 今回の漫画村運営関係者たちの逮捕は、漫画村や、その他の海賊版ビジネスに関わる人たちが主張していた「海外で運営をしているから日本の法律は関係がない」という言い逃れが成立しないことを示した、重要な第一歩だと思います。

 漫画村は、「国交のない・著作権が保護されない国で運営されている」から、自分たちの活動は問題ないと主張していました。しかし、彼らが提供するサービスは日本の雑誌・単行本発売日に全話をアップロードするなど、日本国内に活動拠点を持っていないとあり得ない日本人向けの細やかなサービスが充実していました。実際に昨年、アメリカのサーバ提供会社から取り寄せた漫画村の通信状況をみると、日本国内にも運営の実態があったことがわかっています。

 それでも、海賊版データが日本の著作権法が及ばない国のサーバにあるから、自分たちは無罪だと考えているようでした。確かに、彼らが契約していたと思われるサーバはウクライナにありました。ウクライナはベルヌ条約の批准国でインターネットに対応するWIPO著作権条約にも加わっており、日本の著作権保護の主張は可能かと思いますが、遠方かつ法制度も異なるため、日本からの情報開示請求もままなりません。だから漫画村は摘発対象にならないだろうと考えていたのかもしれませんが、集客のために契約していたアメリカのサービスによって、その言い訳はさらに成立しなくなります。

 漫画村は、大量アクセスを適切に処理してサイトを閲覧しやすくするために、アメリカのサーバ提供会社を利用していました。そのため、実際に閲覧者がアクセスするのは、ウクライナにあると思われるサーバではなく、アメリカの会社が所有するサーバです。そして、アメリカの会社のサーバ上には漫画データのキャッシュ(コピー)が作成されます。著作権法への意識が高く、日本と相互保障の協定があるアメリカで違法な海賊版データが残されれば、著作権侵害事案としての十分な証拠となります。

 また、今回の逮捕報道を見ると、運営メンバーが日本国内から漫画データをアップロードしていた証拠も押収しているようですので、国家間の条約以前に、単に日本の著作権法違反として処理できる部分もあると考えます。

 このアメリカのサーバの利用状況については、漫画家のたまきちひろ先生が原告となり、私が原告代理人となった民事裁判の過程で入手していました。昨年8月に入手したデータからは、今回、フィリピンで拘束された運営者が新宿区の高級タワーマンションにいたことが確認できました。ここですぐ当事者と争うのではなく、漫画村問題については、まずは刑事手続からの責任追及が必要だと考えていましたので、入手していた通信ログなどを日本の捜査当局に提供して協力しながらすすめることとし、告訴手続も行いました。

 一方、今年のはじめ頃から、漫画村運営者が海外にいるらしいという情報が伝わっていましたので、国際捜査は時間がかかるだろうと思っていました。ですので、今回の予想より早い身柄確保はこの問題に取り組む一人として嬉しい知らせでしたし、このニュースによって、日本を脱出して身を隠したつもりでも逃げられないことが広く伝わったことも喜ばしいことでした。そして、今後の海賊版サイト問題に対する世の中の捉え方もより厳しいものになり、作品を創り出す人をないがしろにしてはいけないという考え方が広まるのではと期待しています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中圭と15歳年下の永野芽郁が“手つなぎ&お泊まり”報道がSNSで大きな話題に
《不倫報道・2人の距離感》永野芽郁、田中圭は「寝癖がヒドい」…語っていた意味深長な“毎朝のやりとり” 初共演時の親密さに再び注目集まる
NEWSポストセブン
春の園遊会に参加された天皇皇后両陛下(2025年4月、東京・港区。撮影/JMPA)
《春の園遊会ファッション》皇后雅子さま、選択率高めのイエロー系の着物をワントーンで着こなし落ち着いた雰囲気に 
NEWSポストセブン
現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
週刊ポストに初登場した古畑奈和
【インタビュー】朝ドラ女優・古畑奈和が魅せた“大人すぎるグラビア”の舞台裏「きゅうりは生でいっちゃいます」
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン