日本で初開催となるラグビーW杯がいよいよ迫ってきた。7月7日からはラグビーを題材にした池井戸潤原作のドラマ『ノーサイド・ゲーム』も始まり、競技への注目度も高まっている。ラグビー観戦の初心者が、その特徴として真っ先に思い浮かべるとしたら、あの「楕円球」ではないだろうか。
「なんでわざわざ凝った形のボールでプレーするの?」──そんな素朴な疑問に、ラグビー通は「ボールがどこに転がるかわからないから、ラグビーはおもしろいんだよ」などと答えがちだ。ゲームがおもしろくなることを狙って、あえて楕円球にしているというのである。
本当にそうなのだろうか? 日本のラグビー統括団体である日本ラグビーフットボール協会に尋ねると、「かつてラグビーボールは、ある動物の臓器を利用したものでした」という答えが返ってきた。同協会の広報担当者が解説する。
「イングランドラグビーフットボール協会が発行している『MUSEUM OF RUGBY』という書籍によると、ラグビーボールは、昔は豚の膀胱を膨らませ破裂しないように革で包んだものでした。そのため形や大きさはばらばらでした。形は楕円形でしたが、現在の物よりも少し大きく、球に近いものだったそうです」
ラグビーボールはもともと、「豚の膀胱」をリユースしたものだったというのである。それを人間が群がって蹴ったり投げたりする様子は、想像するになかなかシュールである。
ラグビーの統一ルールができようとしていた1800年代前半は、豚の膀胱を風船のように膨らませてボールにしていたという。割れないように牛革などで包んでいたのだが、当然ながら豚の膀胱だから膨らませてもきれいな球体にならず、また技術的にも完全な球体をつくることが難しかったため、そのまま楕円球の時代が続いた。