歴史に「if」はないといわれる。だが、過去の政治の転換点で、「もしもこの政治家が総理になっていたら、“国のかたち”は違っていたかもしれない」と期待された人物は少なくない。
日本政治の分水嶺はどこにあったのか──参院選(7月21日投開票)を前に検証することには重要な意味がある。本誌・週刊ポストのアンケートで政治家OB、政治記者、評論家ら30人が「総理になってほしかった政治家」を選んだ(別掲表)。
安倍晋三首相はこの6月に総理在任期間で初代首相の伊藤博文を抜き、歴代3位となった。参院選後の8月24日には大叔父である佐藤栄作・元首相、そして11月20日には通算2887日となって桂太郎・元首相を超え、戦前・戦後を通じて歴代1位となる可能性が高い。
「政治家は所業の結果を歴史という法廷で裁かれるものだ。だから常に歴史の法廷の被告席に座っている」
とは中曽根康弘・元首相の言葉である。毀誉褒貶ある安倍政治の評価は後世に譲るとしても、なぜ、安倍首相は権力の座にとどまり続けることができるのか。壊滅状態の野党、自民党内の後継者難など様々な理由が挙げられるが、永田町には、現在の安倍政権は「父子2代の内閣」なのだという興味深い見方がある。
首相の父、安倍晋太郎・元外相は中曽根政権後の総裁選び(1987年)で竹下登氏、宮沢喜一氏と総理・総裁の座を争い、自民党幹事長として「次の総理」の座を目前にしながら病に倒れ、帰らぬ人となった。40年近くにわたって自民党本部職員を務めた田村重信氏(拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー)が語る。