ネット生放送の定番番組のひとつに「ゲーム実況」がある。eスポーツの強豪選手による配信だけでなく、有名YouTuberによる配信も録画も含めて人気だ。ゲーム好きで知られるモデルで女優の本田翼が突如、YouTubeでゲーム実況を始めた時には、本人が写っていないにも関わらず1日で100万回再生を超えた。そのゲーム実況配信の世界に、アンガールズの田中卓志が2018年12月から加わった。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、人に見られるときは面白くて当然と言われる芸人が、ゲーム実況に加わった意義について考えた。
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先日、小学6年生が将来就きたい仕事のランキングが発表された。男子の1位は定番のスポーツ選手、2位の研究者に大差をつけての首位である。そして、注目が集まったのがスポーツ選手の内訳だ。40%のサッカー、30%の野球、6%のテニスときて、4%のeスポーツが続く。現在、国内のeスポーツ大会の最高賞金は1億円。「ゲームしてお金もらえたらいいのに?」なんて戯言がシャレじゃない時代になっている。
eスポーツの隆盛によって、一時はテレビから姿を消していたゲーム番組も増えている。今年33歳となった僕の小学生時代、娯楽といえばスーパーファミコン一色だった。テレビ東京の木曜18時といえば任天堂一社提供のゲームバラエティ番組。ちなみに10年以上放送されていた。素人の小学生がゲームに関するクイズに挑戦。優勝商品のゲーム、テレビ出演の相乗効果で興奮状態となるガキをいなす司会者の渡辺徹、対子供専用ともいえる職人的な司会術が記憶に残っている。それにしても、あの頃のテレ東は二軍感が強かったなぁ……。
現在、渡辺徹に代わりテレ東のゲーム番組の司会を務めるのは芸能界の一軍選手・有吉弘行。有名人の自宅に赴き、ゲームに興じる番組『有吉ぃぃeeeee!~そうだ!今からお前んチでゲームしない?』が毎週日曜22時から放送されている。タイトルからもわかるようにeスポーツの要素を含む番組、公式ツイッターで対戦相手を募集するといった試みも行っている。
実は『有吉ぃぃeeeee!』、有吉が「これ、街ブラ番組だから」と自嘲しちゃう番組でもある。番組の前半は有名人が住む街の商店街を探索。試食しつつ、お宅訪問する際の手土産を探す。やっと自宅にたどり着き、ゲームに興じる。プレイ以上にゲーム内の出来事から派生する雑談が面白い。誰よりも真剣にゲーム挑むアンガールズ・田中卓志の失敗を「お前、ダメな奴だなぁ~」と笑う有吉。子供の頃、友達の家でゲームをした日々を思い出す。買い食いとゲーム、こんなノスタルジーでカルピスの味が呼び覚まされる。
『有吉ぃぃeeeee!』はYouTubeでも展開されている。田中をメインとしたスピンオフ『卓志ぃぃeeeee!』が公式アカウントより配信中。本編が昭和的なゲームの楽しみ方なら、スピンオフは現代的なゲームの遊び方。田中はインターネットを通じて、世界中の人と戦う。ゲーム実況をしつつ、ゲーム能力の向上を目指している。ゆえに動画のタイトルには「特訓」といったフレーズが付けられることも多い。
YouTubeでゲーム実況が定番のコンテンツとなってから長い。ヒカキンを筆頭にYouTuberの多くがゲーム実況だけのチャンネルを持っている。そんな土壌にテレビ局と一流芸人が組んだ『卓志ぃぃeeeee!』が挑む。力の入れ方はアイコンを見れば一目瞭然、田中の写真の上にはタイトルと動画の趣旨説明。いかにもYouTuberっぽいアイコンが設定されていた。テレ東がYouTube仕様に寄せる。時代は随分と変わった。
アイコンと同様に田中も力を入れている。芸人としての矜持もあるはず、YouTuberとは一味違うゲーム実況を見せたいところ。視聴者もプロとしての面白さを期待している。現在、配信されている動画を鑑賞すると田中とゲーム実況の相性は良いeeeee!
ゲーム実況者は大まかに、スーパープレイを披露するやりこみタイプ。そして、プレイ中のリアクションで人気を集めるタイプの2つに分けられる。特訓中の田中は当然後者、「リアクションに貴賎なし」とテレビと同様の破顔やふるまいを披露する。