歴史に「if」はないといわれる。だが、過去の政治の転換点で、「もしもこの政治家が総理になっていたら、“国のかたち”は違っていたかもしれない」と期待された人物は少なくない。
日本政治の分水嶺はどこにあったのか──参院選(7月21日投開票)を前に検証することには重要な意味がある。本誌・週刊ポストのアンケートで政治家OB、政治記者、評論家ら30人が「総理になってほしかった政治家」を選んだ(別掲表)。
その結果をみると、森喜朗内閣時代に起きた自民党の「加藤の乱」の主役、加藤紘一氏(9位)もランクインしている。
「論理的な思考能力がある人で、レベルの高いリベラルな政治家でした。日本会議の存在に最初に警鐘を鳴らした人でもある。加藤さんが失脚したことで、自民党では右派とリベラル派が交互に政権を担うという振り子の論理が働かなくなり、弱者に対して目配りをするのが政治だという意識がまるっきりなくなっていった」(ノンフィクション作家・魚住昭氏)
その加藤氏の後継者で、“自民党最後のリベラルの星”と呼ばれたのが谷垣禎一氏(3位)だ。
「野党になっていつ空中分解してもおかしくなかった自民党を、谷垣氏は総裁として何とか持ちこたえさせた。ただ彼が総理として手腕を発揮できるのは、安定した時代だと思う。リーマンショックに見舞われ、東日本大震災なども踏まえれば、時代が彼を選んでいなかったとも言える」(岩井奉信・日本大学法学部教授)