近年、私立の中学・高校が付属関係にない私立大学と学校法人の垣根を超えて手を携える“高大連携”の動きが急拡大しているという。その背景にはどんな事情があるのか──。安田教育研究所の安田理がレポートする。
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近ごろ私立中高と接していて感じることの1つに、「高大連携」に取り組む学校が増えていることが挙げられる。
学部、研究室単位での交流は以前からあったが、最近は法人として正式に協定書を結ぶ例が目につく。23区内の私立大学の定員の厳格化によって有力私大が軒並み難化し続けていることが、こうした取り組みを盛んにしている背景だが、一般にはあまり知られていない。そこで、主に私立の中高と私立大学の例を見ながら、なぜ広がっているのか、探ってみたい。
◆一気に受験生が増える「系属化」「準付属化」
2016年度以降、政府の「地方創生政策」の一環で、23区内の大学は定員の厳格化による合格者発表数の減少から有力私大が軒並み難化しています。そのため、わが子の受験時にはもっと難しくなるのではと心配した保護者が付属校に入れようとしている動きはご承知かと思います。
付属校だけではなく、系属、準付属となった青山学院横浜英和(前横浜英和女学院)、目黒日本大学(前日出)、青山学院大学系属浦和ルーテル学院(前浦和ルーテル学院)といった学校の受験生が急増したことも耳にされているかもしれません。大学につながっていることが学校選択の大きな要素になっているのです。
◆「高大連携」は公立高校でも
「高大連携」というのは、文字通り高校と大学が連携し、大学教員が高校に来て講演したり、大学レベルの内容を教える「出前授業」をしたりして、高校生に大学で学ぶ意欲を持たせる取り組みです。こうしたことは以前から行われていたのですが、ここへきて文部科学省が奨励していることもあり、加速しています。
私立中高だけでなく、公立高校でもその動きは活発化しています。代表的なところでは、東京都教育委員会が、〈さまざまな大学との連携を進め、専門的な学びの機会を提供するとともに、その成果を大学での学びにつなげ、高大一貫した人材育成を推進〉するとして、下記の5大学と協定を結びました。
・首都大学東京(2020年度から東京都立大学に戻る)
・東京農工大学
・東京学芸大学
・東京外国語大学
・電気通信大学
千葉県でも教育委員会が音頭を取って、多数の県立・市立高校が高校ごとに複数の国公立、私立大学との連携をしています。
私立中高でも従来からの取り組み自体は非常に多数の高校がすでに行っています。