「結局は日本経済に、より大きな被害が生じることを警告しておく」。こんな高圧的な言葉を日本に向けて発したのは、韓国の文在寅大統領。7月15日、ソウルの大統領府で開かれた会議での発言である。
発端となったのは、日本政府が7月4日に実施した対韓輸出の新たな方針だ。半導体やディスプレイの製造に必要な感光材(レジスト)、エッチングガス(フッ化水素)、ディスプレイ用樹脂材料(フッ化ポリイミド)という3品目について、従来の簡略な手続きを改め、個別に輸出許可申請を求めて輸出審査を行なう方針に切り替えるという内容だった。
実際に韓国経済への影響はどうなのだろうか。元在韓国特命全権大使で外交経済評論家の武藤正敏氏が指摘する。
「文大統領の強気に見える発言は、実際にはかなり動揺していることの表われです。というのも、これまで日韓関係がいくら悪化しても何も手を打とうとしなかった文大統領が、今回は即座に側近であるユ・ミョンヒ通商交渉本部長を米国に派遣し、問題の仲裁を要請しました。
韓国財界の動揺はさらに激しく、サムスンのイ・ジェヨン副会長は、文大統領が主宰する財界人との会合を欠席までして来日し、日本側との調整に乗り出した。サムスンだけでなく、情報通信事業を軸に据えるSKやLGといった大手財閥企業も代替の半導体素材を調達すべく、右往左往しています」