吉本興業の岡本昭彦社長が、一連の「闇営業問題」について5時間半もの会見を行ったが、歯切れの悪い回答が延々と続き、なかなか核心に迫れなかったといった評価をされている。ネットでのノーカット生中継などもされるようになり、会見のありようは以前とは異なっている。「善悪の構図がはっきりと分かれるようになってきた」とネットニュース編集者の中川淳一郎氏は述べる。以下、中川氏による解説だ。
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今の状況は「1億総謝罪評論家状態」であり、「1億総会見評論家」になっているのではないだろうか。注目の会見があったら、それについて良い、悪い、誠意があった、立派だった、泣けてきた、ますます印象が悪くなった、などとすぐにツイッターに書き込み評論する。
岡本社長の会見については、同氏にしかできないことを聞かれ、沈黙の後、「皆に後で聞いておきます」と述べた点が大ブーイングを浴びた。リスク管理の専門家も会見後に岡本社長の受け答えの問題点を述べるなど、今回の件はリスク管理のケーススタディーの教科書に載るものとなったことだろう。
同様に、「日大悪質タックル問題」では、「つぶせ」と宮川泰介選手に指示した内田正人監督(当時)の会見がこれまた要領を得ないとブーイングを浴びたほか、会見を仕切っていた広報担当者が記者に「もう充分聞きました、もうやめてください!」とキレるなどし、こちらもネット上の「評論家」から批判を受けた。
その後、悪質タックルをした当事者である宮川泰介選手が会見に臨み、その誠実かつ反省の色が見られる姿に「彼を雇いたい!」といった企業が出るほど評価が高かった。また、組織の隠蔽体質を暴いた点も高く評価された。
闇営業問題では、岡本社長の会見に先立ち、宮迫博之と田村亮が会見をしたが、ここでは吉本への不信感が語られるとともに、反省の姿も見え、一気に世論を「かわいそう」という雰囲気にさせ、「吉本=悪」の構図を作ることとなった。そして、2日後の岡本社長のトホホ会見である。日大の時と同じような展開になっている。
◆記者も批評対象に
岡本社長による「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本の株主やから大丈夫や」発言により、事務所とテレビ局の歪んだ癒着体質があからさまになったが、今回もう一つ批判の対象が登場した。
それは記者である。
『アッコにおまかせ!』(TBS系)の記者が、宮迫に対して「不倫報道の時(心境を)『オフホワイト』と言っていましたが、今の心境を色で表すと?」と質問したのだ。これにはあまりにも非常識な質問だと炎上。さらには、真摯な態度を取る宮迫に対して失礼だとの批判に加え、テレビ局の「おいしい発言を取ってやれ」的姿勢も見抜かれ批判された。
つまり、会見というものは、そこに登場する主体すべてが批評の対象となっているのだ。全部中継しない場合は、『アッコにおまかせ!』の記者の質問はカットされていたかもしれない。ネット時代になり、記者も同様に評価されるようになっているのだ。