普通に生活する限り、犯罪に関わりを持つことはないはずだと思って誰もが生活しているだろう。ところが、誰でも閲覧し利用できるSNSで、まるでお菓子についておしゃべりにするように、薬物についてつぶやくアカウントがいくつも存在する。ライターの森鷹久氏が、それら薬物アカウントの実態についてレポートする。
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今日も“コレ”でぶっ飛びます──。
こんな文言と共に、とある人物のツイッターアカウントに上げられていたのは、緑色のフワフワとした物体の写真。見る人が見れば一発でそれが何なのかわかるだろう。日本では所持や売買が禁止されている「大麻」だ。その人物のツイッターには“鍵”がかかっておらず誰からも見られる状態で、およそ一週間に一度のペースで「大麻」の写真だけでなく、大麻をタバコ葉と混ぜ、紙巻きたばこ状にした「ジョイント」に火のついた状態の動画までアップされている。
自ら大麻所持、大麻の使用を喧伝しているようなもので、もし本当に使用しているなら当局が放っておかない。気になるのは、なぜこのような危ない写真や動画を、司法当局を含む不特定多数が閲覧できるSNS上にアップするのか、その目的だ。筆者は数ある「大麻アカウント」のうち、ダイレクトメールができる設定の数アカウントにメッセージを送り接触。そのうちの一人から、驚くべき彼らの「目的」を聞くことができた。
「売るとは書いていませんよ。でも買いたいやつは、持っているやつに接触してくるんです。薬物の売人が大っぴらに宣伝できるわけないでしょう? 売人という商売が成り立つのは、あっちから寄ってくるからです。営業なんかしなくていいんですから、SNSはうってつけです」
東京都下に住むというW氏(30代)は、10代後半から大麻やコカインといった違法薬物にハマり、二十歳になる頃には薬物の売人として、六本木や渋谷のクラブ界隈でちょっとした有名人だったと自称する。その後、薬物売買で月に数百万円の利益を稼ぐようになると、信頼できる部下を使ってさらに“事業の手”を拡げていった。
「薬物ですから、その地域のケツ持ち…平たく言えば暴力団なんですが、そこに筋を通す必要があります。だからいろんなルート駆使してね、やってたんです、商売を。でも、ヤクザが(暴排条例などで)厳しくなってきて、ネットで売るようになったって感じ。ネットだといろんな人が買いに来てくれますからね。北は北海道から、南は沖縄の離島まで客がいますよ。売ります、って書かなくても、ブツの写真を上げとけば“売ってくれませんか”と連絡が来るんで。楽なんですよ」(W氏)
確かに、ネット掲示板には今も「野菜、アイス押します」とか「緑17000」などの隠語と共に、メールアドレスが記載された書き込みが散見される。野菜とは「大麻」、アイスは「覚せい剤」、押すとは「売る」、緑1は「大麻一グラム」のことをそれぞれ指す隠語だ。「ディープ・ウェブ」とよばれる、アクセス主特定が難しい特殊なWebブラウザを介してしか利用できないウェブサイトや掲示板では、薬物だけでなく、違法なポルノ動画や盗品と思われる物品の取引も目立つ。