上場番号1番のドゥラメンテ産駒に、いきなり「4000万!」という声がかかる。間髪を置かず「7000万!」、すぐに「1億!」……こうして始まった2019年のセレクトセールは、2日間合計で416頭が落札され、その総額は史上最高の205億円(消費税別。以下同)に及んだ。競馬歴40年のライター・東田和美氏が、セレクトセールの面白さと、落札額だけでは分からないサラブレッドの持つ可能性の魅力について解説する。
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新千歳空港から車で15分ほど、セレクトセール会場の苫小牧市ノーザンホースパークには、馬主、調教師、騎手からメディア人まで、日本の競馬関係者が一堂に集まる。セール会場の周囲には、北海道産などの食材を使った料理のブースが並んで野外パーティーのような賑わいだが、みな都内のホテルで行なわれるJRA賞などのようなフォーマルな装いではない。馬産地らしく牧場を走り回るような普段着で、それぞれの個性も際立ち、表情も開放的だ。
上場されるのはどれも社台グループ、とくにノーザンファームを中心にした「選び抜かれた馬」だけに、血統や素質は一流で、ブランド力や育成への信頼度も抜群。母系は内外の重賞勝ち馬の近親、そして父親はディープインパクト、キングカメハメハ、ロードカナロアをはじめとする人気種牡馬が勢ぞろい。
初日(1歳馬)は平成27(2015)年のオークスと秋華賞を勝ったミッキークイーンの全弟(父ディープインパクト)が3億6000万円で落札されたのをはじめ、21頭に1億円以上の値が付いた。239頭中222頭が落札、総額は107億3200万円と過去最高を記録。ディープインパクト、ハーツクライなどのサンデーサイレンス(以下SS)系種牡馬の産駒は相変わらず人気だが、将来の種牡馬入りを念頭に、SSの血を持たない馬にも注目が集まった。