7月18日、アニメ制作会社・京都アニメーションの第一スタジオ(京都市伏見区)で放火による火災が発生、国内の放火事件では平成以降最悪の死者34人、負傷者35人となった。この事件のニュースに接して、背筋が寒くなる思いをしているアニメ業界関係者は少なくない。本来は裏方で黒子として存在する制作会社や制作スタッフだが、昔から、そして普段から押しかけや侵入などの被害は珍しくなく、愛着を通り越して憎悪をぶつけられることが増えているように感じているからだ。ライターの宮添優氏が、SNSが普及してより回避しづらくなった制作者をめぐるトラブルについてレポートする。
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2000年代以降の日本アニメを語る上で欠かせない「京都アニメーション」。京アニと呼ばれファンから愛されるその会社の第一スタジオにガソリンをまいて火を放ち、実に34人もの、アニメ制作に携わる人達を死に追いやった男。あまりに凶悪すぎる犯行の裏に、一体どんな動機が潜んでいるというのか──
「新聞やテレビで、断片的な容疑者の情報は報じられているように、目撃者によれば“ネタをパクった”というようなことを叫んでいたとの話もありますが、容態は回復しておらず、麻酔で寝かされている状況。取り調べは行われておらず、供述は未だゼロの状態です」
全国紙の在阪支局記者がこう話す通り、容疑者の犯行動機は、事件から一週間が経とうとしても何一つ明らかになっていない。ネット上には憶測に基づいた様々な噂が飛び交っているが、京アニ社長がマスコミ各社の取材に「容疑者が作品を送ってきた形跡はない」と明言するなど、その動機はますます闇の中に、といった様相だ。そんな中、本事案について「想定しうる一番最悪のことが起きた」と話してくれたのは、都内のアニメーション会社関係者・S氏だ。
「我が社にも、毎月多くの“持ち込み”があります。漫画やアニメ原作、小説まで本当に様々。夏休み明けは、学生さんからも多数送られてきて、制作で忙しいスタッフが一応全て目を通すようにしていますが…。京アニさんには、世界中から作品が持ち込まれるとも聞いています。容疑者の“パクった”発言が、どのような事実に基づいたものなのか…」(S氏)
容疑者の発言をそのまま受け取ると、容疑者が京アニに対して送った何らかの「アイデア」が、容疑者に何の断りもないままに京アニの作品として世に出された、ということだろうが、先出の通り、パクリどころか送られてもきていないと社長は説明している。
「単純な見落とし、という可能性は捨てきれませんが、昔からこの手の“トラブル”はありました。作品の一部を見て“自分が送ったアイデアだ”とクレームの電話をかけてきたり、場合によっては事務所や制作現場に乗り込んできたりする人がいます。こうした危険があることから、漫画やアニメの制作現場に入る際に、IDチェックなどを設けた会社は多いです」(S氏)