日産自動車はカルロス・ゴーン被告(前会長)を完全追放し、西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)主導の新体制に移行したが、出足からつまずいた。極度の業績不振に見舞われているうえ、従業員の大規模リストラも避けられず、早ければ2020年春に社長交代と取り沙汰され始めた。果たして、日産はどうなってしまうのか。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。
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7月25日に発表した日産自動車の2019年4~6月期の連結決算は、売上高は前年同期比12.7%減の2兆3724億円、本業のもうけを示す営業利益は98.5%減の16億円と、記録的な減益となった。最終利益も94.5%減の63億円と大きく落ち込んだ。
営業利益は四半期(3か月)ごとに開示を始めた2005年3月期以降で最低。売上高営業利益率は0.1%(前年同期は4.0%)にまで急降下した。「カルロス・ゴーンの負の遺産」(自動車担当アナリスト)だけとは言い切れないような惨状を呈した。
本業の自動車事業は574億円の営業赤字。世界販売台数は6.0%減の123万台で世界販売の約3割を占める主力の米国販売が3.7%減と落ち込んだことが響いた。
米国事業はカルロス・ゴーン前会長が強引な拡販作戦を展開。値引き販売への依存を続けた結果、儲けが出なくなってしまった。値引きの原資となる販売奨励金を抑えて収益改善に取り組んだが、“安い日産車”というイメージしかないユーザーは、価格が上昇すると、あっという間に他社のクルマに乗り換える。西川・日産は、文字通り、悪循環に陥った。
そこで日産は立て直しに向け、コスト削減策を打ち出した。
世界の14拠点で生産ラインの縮小などを進め、稼働率を69%から86%に引き上げる。「過剰能力200万台」(同)と指摘されていた世界の生産能力を2018年度から60万台削減し、2022年度までに660万台体制とする。新興市場に本格的に投入する予定の「DATSUN」ブランドなど、販売不振の小型車を中心に生産モデル数を10%以上減らす。これに伴い、世界の従業員数の約10%にあたる1万2500人以上の人員削減に踏み切る。
大規模なリストラ策は1999年にカルロス・ゴーン被告が公表した「日産リバイバルプラン」以来となる。この時は、国内5工場の閉鎖や世界で約2万人を削減した。「聖域なき改革」(カルロス・ゴーン)を謳い文句に、およそ2年でV字回復を果たした。だが、ここ数年は戦略的な新車の投入もなく、商品力を底上げできないまま、規模の拡大に走り、業績悪化を招いた。