この夏、多くの話題のドラマが登場しているが、人気なのは女性が主人公となった作品だ。それらには共通したある演出があった。コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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ドラマ『偽装不倫』(日本テレビ系)の濱鐘子(杏)と、『凪のお暇』(TBS系)の大島凪(黒木華)、『これは経費で落ちません!』(NHK)の森若沙名子(多部未華子)、さらに前回、このコラムでとりあげた『ルパンの娘』(フジテレビ系)の三雲華(深田恭子)。各局の看板ともいえる女性主役ドラマに共通していることは何か。
それは彼女たちの「心の声」がひんぱんに聞こえてくることだ。『偽装不倫』の鐘子は、結婚してもいないのに既婚とウソをついて、美形カメラマン丈(宮沢氷魚)と恋愛モードに。飛行機で偶然、彼と目が合った瞬間、心の声は「イケメン!!」と叫び、未婚と言い出せなくなって「なんで私、ウソついた~!!」と後悔しまくり。とはいえ、なんだかんだで彼とお出かけすることになると「これがリア充ってやつですか~」と目にハートが浮かぶ勢いだ。
一方、『凪のお暇』の凪は、仕事も恋愛も失い、家具も捨てて引っ越した安アパートの隣人安良城ゴン(中村倫也)に接近され、困惑気味。危険な香りのゴンとコインランドリーでふたりっきりになると、心の声は「どうしよう。パーティーピープルと二人きり…」と逃げ腰になるのだが、ゴンの優しさに触れると「この恋の歯車、回っちゃダメなやつ!!」と自分を叱ったりする。
『これは経費~』では、経理部の鉄の女のような森若が「だいたいの社員は、入社すると少しずつずるくなる…」と、心の声で言いながら、経費の管理に目を光らせ、『ルパンの娘』では泥棒一家の華が、恋人の刑事にバレないか心の声でハラハラを訴える。とにかくどのドラマもヒロインの心の声に笑わされ、泣かされるという構図である。
この構図はどこかで見たことが…と思ったら、それはマンガの世界だった。マンガにはセリフとともに登場人物の葛藤や決意といった心の声が文字で書きこまれる。マンガ原作のドラマはこれまでも多かったが、伝え方もマンガに近いドラマが増えてきたということだ。