「せっかく胸が大きくなったのに、こんなリスクがあるなんて。体内に時限爆弾を抱えているようで、毎日怖いです」(42才・会社員)
「豊胸手術を受けたのは5年前。バストアップの代償として、これからがんになる可能性があると思うと、怖くて眠れない」(49才・主婦)
過去に、ある手術を受けた女性たちの身をすくませる問題が大々的に報道された。それは豊胸手術などで、人工乳房を使った女性の一部に、特殊なリンパ腫が発症しているというニュースだ。
米食品医薬品局(FDA)は7月24日、関連があるとみられる死者が世界で33人になると発表。また、死者以外に573人の患者を確認しているという。その人工乳房の大半を製造するアイルランドの大手製薬会社のアラガン社は当局の要請に応じて、対象製品の自主回収と販売停止を表明した。
日本でも6月に、厚生労働省が医療機関に対して、患者に対するリスクの説明を強化するよう指示していた。
「人工乳房に限らずインプラント(人工のシリコン製バッグ)を埋め込むと、体が異物として反応し、インプラントの周りに被膜ができ、そこにリンパ腫の細胞が発生することがあるのです」(美容・医療ジャーナリストの海野由利子さん)
日本で受けられる豊胸手術には、3つのタイプがある。人工乳房を挿入する「人工乳房バッグ」、お腹などの脂肪を注入する「脂肪注入」、ヒアルロン酸などを注入する「充填剤注入」だ。
「人工乳房バッグ」には、バッグ表面がざらざらしているテクスチャードタイプと表面がツルツルのスムースタイプがある。
日本ではこのテクスチャードタイプを選ぶ女性が多いというが、それには別の大きな理由もある。
「アラガン社製の人工乳房バッグは豊胸だけでなく、乳がん治療後の乳房再建手術時にも用いられます。なぜなら日本で唯一保険適用されるのが、同社のテクスチャードタイプだからです」(海野さん)
この製品が保険適用された2013年以降、国内では約4万5000個が販売されてきた。
2児の母である田中由美さん(39才仮名)は2年前に乳がんの切除手術を行った後、乳房再建手術を受け、アラガン社の製品を挿入した。