政府の中央防災会議によれば、M7.3クラスの都心南部直下地震が起こった場合、首都圏の死者数は最大で2万3000人にのぼると想定されている。しかし、それはあくまでも普段の東京を前提に導き出された被害推計である。東京五輪が開催される2020年8月、期間中には1010万人が観戦に訪れると予測されているが、その最中に「首都直下型地震」が起これば、甚大な被害を招きかねない。
例えば、新国立競技場をスタート・ゴール地点に、皇居や東京タワーなどの名所を巡るマラソンコースには、大きな危険が潜んでいる。東京女子大学の広瀬弘忠・名誉教授(災害リスク学)が警告する。
「政府予測では、最大2万3000人の死者のうち、約7割の死因が『火災』によると推測されています。
とりわけ、東京の東側の下町に多い木造住宅密集地域は、火災のリスクがより高くなる。マラソンコースの15km地点である浅草周辺は、木造住宅が密集するため燃え広がりやすいと言えるでしょう」
そうなれば、沿道で選手を応援していた観客が逃げ場を失う可能性がある。マラソンに伴う交通規制の影響で、消防車の到着が遅れる事態も想定される。ボクシング会場の両国国技館周辺も、木造住宅が集中するため、同様の注意が必要だという。