7月初旬、韓国・ソウルのホテルの一室で口を開いた男性は、在日韓国人実業家の許永中氏(72)。1991年にイトマン事件、2000年に石橋産業事件で逮捕、有罪判決を受けた、「戦後最大のフィクサー」と呼ばれた人物である。
両事件で計13年の懲役刑が確定した許氏は、2005年に黒羽刑務所(栃木県)に収監されるも、2012年に母国・韓国での服役を希望し、ソウル南部矯導所(刑務所)に移送。翌2013年9月に仮釈放され、いまはソウル市内で家族と暮らしている。
韓国移送後の2013年9月に仮釈放されてから6年。都市開発や介護事業などをしているという許氏が、この間の実業家としての活動について、初めて明かした。
「南北朝鮮の発展に寄与する。これが私の最後のテーマです。民族が分断されたままの悲しい歴史が一日も早く解決することを心から願っている。
名前を挙げることは差し控えますが、近頃、私の元を訪ねる日韓双方の要人が増えました。相談事の9割は北朝鮮問題に尽きる。各国、北朝鮮との事業を始めたいが、先方が門戸を閉じている。これをそっと開けてもらえないか。そんな相談です。幸いにも、これまでの人生で、北朝鮮に通じる表と裏の人脈をそれぞれ培うことができた。
昔から韓国の政治経済に関わってきた身として、昨今の南北統一の兆しを少しでも感じることができるのは、感慨深いものがある。