明治、大正、昭和、平成──激動の時代を生き延びて今なお現役の木造駅舎は、貴重な「鉄道遺産」といえる。早稲田大学鉄道研究会 “降り鉄分科会”が、千葉県内のJR沿線に残る木造駅舎36か所を紹介する。
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昔ながらの駅の姿を色濃く残し、鉄道ファン以外からも人気の木造駅舎。全国的に見ても数を減らしつつあるが、東京からほど近い千葉県内のJR線では令和の時代を迎えた今でも36の木造駅舎が現役である。それらの木造駅舎を路線ごとに紹介していこう。
◆「千葉の大動脈」に残る木造駅舎──総武本線
東京と銚子を結ぶ千葉県の大動脈とも言うべき総武本線は、東京~千葉間においては駅の近代化が進んでいるが、成東駅より先ではローカル線のような雰囲気である。木造駅舎が残るのも成東駅より先の区間で、成東、松尾、横芝、八日市場、干潟、松岸の各駅は木造駅舎が使われている。このうち、成東駅はリニューアルされているものの、それ以外の駅は比較的昔のままの状態で残っている。
松尾駅、横芝駅、八日市場駅の木造駅舎はいずれも入母屋造りで、駅が開業した明治30年代に建てられたものだと考えられている。明治31(1898)年開業の松尾駅は昭和24年に一部が改築されているものの昔ながらの瓦屋根で、原型を色濃く残している。明治30(1897)年開業の横芝駅は松尾駅の駅舎を一回り小さくしたような感じだが、屋根がスレート葺きに変えられている。同じく明治30年開業の八日市場駅の駅舎は瓦屋根のままだが、入口部分に三角屋根の車寄せが増築されているため、他の2駅とはイメージが随分と異なる。
干潟駅の駅舎は、回廊付きの切妻屋根で、松尾駅などとは形状が随分と異なる。建てられた時期は不明だが、もし明治31年開業時のものなら、松尾駅などと同じ入母屋造りで建てられているはずなので、おそらく後から建て替えられたものだろう。
成田線との接続駅である松岸駅は、昭和24(1949)年に一部が改築されたという記録はあるものの駅舎の建築年代は不明である。余談だが、この駅のスタンプは戦前のものだそうで、駅名の文字が右書きになっている。