テレビ朝日の夜の看板枠にある“異変”が見られるという。それは名作の再放送ラッシュ。しかも、開局60周年企画だという。テレ朝の狙いとはいったい? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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『日曜プライム』(毎週日曜21時~)は、テレビ朝日唯一の単発特番枠ですが、今月のラインナップを見て驚かされました。
先週8月4日に『松本清張生誕110年記念 点と線』が放送されましたが、今日11日に予定されているのは『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』。前者は2007年、後者は2009年にそれぞれ2夜連続ドラマとして放送された作品です。
さらに来週18日には『松本清張生誕110年記念 十万分の一の偶然』が予定されていますが、こちらも2012年に放送された作品。また、25日の『深層捜査スペシャル』は新作ドラマですが、9月1日の『ナサケの女Special~国税局査察官~』は2012年に放送された作品です。
つまり、「この1か月で放送される5回中4回が再放送」ということ。しかもこれらは「テレビ朝日開局60周年記念」の番組であり、日曜夜という在宅率の高い時間帯を踏まえると、異例のラインナップと言えます。
局を挙げた“60周年記念番組”であり、夏を彩る大型企画にも関わらず、なぜ再放送の作品をそろえたのでしょうか?
◆「大物俳優の名作」なら再放送でもOK
「夏の傑作選」と掲げているように、上記のラインナップは名作ぞろい。いずれも視聴率15%以上を獲得した実績があり、さらに『点と線』はビートたけしさん、『刑事一代』は渡辺謙さん、『十万分の一の偶然』は田村正和さん、『ナサケの女』は米倉涼子さんと、それぞれ大物俳優が主演を務めました。「名作は時代を超えて愛される」というコンセプトの企画であり、「再放送でも高視聴率が獲れる」という目論見があるのでしょう。
また、見逃せないのは、「松本清張生誕110周年記念」というキャッチコピー。今回放送される『点と線』は2009年にも「松本清張生誕100年記念特別版」、『十万分の一の偶然』は2012年にも「松本清張没後20年・ドラマスペシャル」として放送されていました。毎週平日の日中に『相棒』などを何度も再放送していることも含め、「名作の再放送はテレビ朝日の常とう手段」なのです。
ただ、どんな名作だとしても、通常なら再放送ではなく、リメイクするのがセオリーであり民放としての矜持。実際、今年は『二つの祖国』(テレビ東京系)、『大奥 最終章』(フジテレビ系)、『砂の器』(フジテレビ系)、『アガサ・クリスティ 予告殺人』(テレビ朝日系)、『白い巨塔』(テレビ朝日系)などの名作が次々にリメイクされました。
これはテレビ朝日とフジテレビが開局60周年、テレビ東京が開局55周年を迎えたからであり、「大型ドラマを放送しよう」という狙いは明白。だからこそ、今夏の『日曜プライム』の再放送戦略には「そんな消極策でいいの?」という思いが拭えません。
◆名作の縮小再編集に批判の声も