郷土にゆかりの貴重な資料などを、どうやって後世に伝えていくか。全国の自治体が頭を悩ませているこの問題に、縄文時代から人が住み、古くから交通の要所として栄えた京都府福知山市も直面していた。建物の老朽化や資金の問題で昨年4月から休館していた福知山鉄道館ポッポランドが、1個人からの寄付によって再開できることになった。福知山と鉄道のゆかりの深さ、歴史的資料を保存・展示し続ける難しさについて、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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今年7月、JR西日本がIC乗車券「ICOCA」の利用範囲を拡大することを発表した。「ICOCA」が新たに利用できるようになるのは、福知山支社が管轄する北近畿エリアで、同エリアには城崎温泉や軍港として栄えた東舞鶴駅・西舞鶴駅などがある。
IC乗車券の利用範囲が拡大することで、鉄道の利便性は向上する。観光需要の増加も見込まれる。有名な観光地を抱える北近畿エリアにとって、ICOCAの範囲拡大は大きなチャンスでもある。
JR西日本や京都丹後鉄道は“北近畿ビッグXネットワーク”と呼ばれる特急ネットワークを構築し、京都・大阪と北近畿間のアクセス改善。産業振興、地域活性化に力を注いできた。
そうした北近畿にあって、京都府福知山市は明治から令和の現在に至るまで北近畿エリアの中心都市として地域経済を牽引してきた。
「福知山市の玄関口でもある福知山駅は、現在でもJRの山陰本線・福知山線、京都丹後鉄道が発着する鉄道の要衝地です。明治期から鉄道が敷設された福知山駅は、鉄道の街としても栄えてきました。駅には車両基地があり、往時の福知山市街は鉄道で大変にぎわいました」と説明するのは、福知山市産業観光課の担当者だ。
山陰本線・福知山線、京都丹後鉄道のほかにも、1974年まで北丹鉄道というローカル私鉄が福知山駅から発着していた。
鉄道が支えた福知山の歴史を後世に伝えるため、市内各所には鉄道遺産が点在している。福知山駅一帯に残る鉄道遺産は、地元有志や鉄道ファンたちが守り続けている。1998年にはJRのOBや商店街有志によって、鉄道保存展示施設「福知山鉄道館ポッポランド」が開館。以降、福知山の観光名所として親しまれてきた。
ポッポランドが入居していた建物は、1933年に竣工された。そのため、老朽化は激しく、耐震強度も不足していた。それらを理由に、昨年3月末に閉館。現在は、蒸気機関車C5856が展示されているポッポランド2号館だけが公開されている。