ビジネス

消費者の「アウトレットモール離れ」が進んでいる理由

「売れ残りの在庫品」ばかりではなくなったが…

「売れ残りの在庫品」ばかりではなくなったが…

 お盆休みに観光も兼ねて大型アウトレットモールで買い物予定を立てている人は多いだろう。1993年に日本で初めてアウトレットモールが開業して以降、大型モールは38店(日本ショッピングセンター協会調べ)まで増え、常に賑わっている郊外施設がある一方で、すでに閉鎖してしまった施設も出るなど、ブームは一服した感もある。ファッションジャーナリストの南充浩氏が、アウトレットモールの現状をレポートする。

 * * *
 日本に初めてアウトレットモールが誕生してから26年が過ぎようとしています。じつは開業当初、業界の中にはアウトレットモールに対して否定的な見方をする人が多くいました。それは流通業界のライバルであるファッションビルや百貨店、総合スーパー(GMS)だけでなく、商品を企画製造するアパレルメーカーの中にも多くいました。

 例えば、大手アパレルメーカー「ワールド」のアウトレットモール内での店舗名は、なぜか「ネクストドア」という名前で、ワールドを連想する言葉の欠片すら見当たりませんでした。これはファッションビルや百貨店などへの気兼ねや忖度からこのような名前にしたと言われています。それほどに当時は流通業からのアレルギー反応が強かったといえます。

 しかし、開業から26年も経って、すでにアウトレットモールは小売り業態のひとつとして認識されており、変な拒否反応や対抗意識を燃やすファッションビルや百貨店も見当たらなくなりました。

 その理由は、アウトレットモールの商品の揃え方、売り方のカラクリが消費者にもバレてしまっているからでしょう。

 20年前のアウトレット店は文字通り「売れ残りの在庫品」ばかりだったので、サイズ欠けや色柄欠けがほとんどでした。しかし、今ではどんな種類・サイズの商品も全部ピシっと揃っています。テナント出店している大手各社はアウトレット店専用の新商品をわざわざ作っているからです。

 たしかに売れ残り品も入荷しますが、それだけでは売り場は埋まりません。1店舗か2店舗しか出していないような小規模ブランドなら売れ残り品だけでも店を回していけますが、アウトレットだけでも10店以上出店しているような有名店は、売れ残り品だけで埋めることは不可能です。そのため、必然的に専用商品を作らねばなりません。

 つまり、現在はアウトレットとは言いながらも、アウトレット品も含めた低価格店舗というのが実態で、大手ブランドになればなるほどその傾向が強まっています。

 20年前は郊外に大型アウトレットモールができれば、周辺道路が大渋滞を起こすほど人が押し寄せ、いくつかの施設はいまだに混雑していますが、そうではない施設も出始め、ブームは落ち着いた感はあります。いまでは施設間格差も拡大していますし、閉店となったモールもあります。

 例えば、1993年に日本初として誕生した「アウトレットモール・リズム」(埼玉県ふじみ野市)も2011年に閉鎖されています。改装閉店ということでしたがリニューアルオープンした施設はアウトレットモールではないため、必然的にリズムは消滅したといえます。

 関西のアウトレットモールも振るいません。大阪・南港にある「タウンアウトレット・マーレ」(大阪市住之江区)は1999年のオープン当初は賑やかでしたが、すぐに閑散としてしまい、今でも一応アウトレットモールとは名乗っていますが、有名ブランドはほとんど出店していません。

 また、同時期に大阪・岸和田にオープンしたベイサイドモール「カンカン」も賑わったのはオープン当初だけですっかり寂れてしまい、今ではアウトレットではなく、ユニクロなどのテナントが入店する普通の商業施設となっています。

 その一方で好調を維持し続けるモールもあります。御殿場(静岡)、神戸三田(兵庫)などにある「プレミアム・アウトレット(三菱地所)」や、木更津(千葉)、滋賀竜王(滋賀)などにある「三井アウトレットパーク(三井不動産)」の“大手2強”は比較的安定した人気を誇っていますが、その勢いも今後どこまで続くか分かりません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

公開された中国「無印良品」の広告では金城武の近影が(Weiboより)
《金城武が4年ぶりに近影公開》白Tに青シャツ姿の佇まいに「まったく老けていない…」と中華圏のメディアで反響
NEWSポストセブン
女子ゴルフ界をざわつかせる不倫問題(写真:イメージマート)
“トリプルボギー不倫”で揺れる女子ゴルフ界で新たな不倫騒動 若手女子プロがプロアマで知り合った男性と不倫、損害賠償を支払わずトラブルに 「主催者推薦」でのツアー出場を問題視する声も
週刊ポスト
林芳正・官房長官のお膝元でも「10万円疑惑」が(時事通信フォト)
林芳正・官房長官のお膝元、山口県萩市の元市議会議長が“林派実力者”自民党山口県連会長から「10万円入りの茶封筒を渡された」と証言、林事務所は「把握していない」【もうひとつの10万円問題】
週刊ポスト
本格的な活動再開の動きをみせる後藤久美子
後藤久美子、本格的な活動再開の動き プロボクサーを目指す次男とともに“日本を拠点”のプラン浮上 「国民的美少女コンテスト」復活で審査員を務める可能性も 
女性セブン
24時間テレビの司会を務めた水卜麻美アナ
《水卜アナ謝罪の『24時間テレビ』寄付金着服事件》「まだ普通に話せる状況ではない」実母が語った在宅起訴された元局長の現在
NEWSポストセブン
すき家の「クチコミ」が騒動に(時事通信、提供元はゼンショーホールディングス)
【“ネズミ味噌汁”問題】すき家が「2か月間公表しなかった理由」を正式回答 クルーは「“混入”ニュースで初めて知った」
NEWSポストセブン
スシローから広告がされていた鶴瓶
《笑福亭鶴瓶の収まらぬ静かな怒り》スシローからCM契約の延長打診も“更新拒否” 中居正広氏のBBQパーティー余波で広告削除の経緯
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・HPより 写真はいずれも当該の店舗、スタッフではありません)
《丸ごとネズミ混入》「すき家」公式声明に現役クルーが違和感を覚えた点とは 広報部は「鍋に混入した可能性は著しく低い」と回答
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から3カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武・源田壮亮の不倫騒動から3カ月の現在》元乃木坂の衛藤美彩、SNSの更新はストップのまま…婚姻関係継続で貫く「妻の意地」
NEWSポストセブン
亡くなる前日、救急車がマンションに……
《遺骨やお墓の場所もわからない…》萩原健一さん七回忌に実兄は「写真に手をあわせるだけです」明かした“弟との最期の会話”
NEWSポストセブン
試合後はチームメートの元を離れ、別行動をとっていた大谷翔平(写真/アフロ)
【大谷翔平、凱旋帰国の一部始終】チーム拠点の高級ホテルではなく“東京の隠れ家”タワマンに滞在 両親との水入らずの時間を過ごしたか 
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 山本太郎が吠えた!「野党まで財務省のポチだ」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 山本太郎が吠えた!「野党まで財務省のポチだ」ほか
NEWSポストセブン