週に2~3回は映画館へ通う諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、この夏におすすめの映画を3本、紹介する。
* * *
暑さを避けて行く所といえば高原か、海か。映画大好きのぼくは、やっぱり映画館に避難したくなる。シートに深く沈みこんで、暗闇のなかに身をひそめると心底リラックスする。年間100~150本のペースで映画を見ているが、この夏、気になった映画を紹介しよう。
まずは『世界の涯ての鼓動』。ノルマンディーの美しい海岸で、偶然出会った男女が恋に落ちる。監督は、『ベルリン・天使の詩』で有名な巨匠ヴィム・ヴェンダースだ。
男はMI6諜報員、女は生物数学者という設定。生物数学者って何だという疑問はさておき、2人はお互いを運命の相手だと悟りながらも、それぞれ死を覚悟して任地へ赴く。2人とも死と隣り合わせになるなかで、愛の記憶に支えられて「生きたい」と願う。「狂おしくも切ないラブサスペンス」というだけあって、果たして2人は生きて再会できるのか?
美しいのは、海、死、愛というすべてを包み込む大きなイメージだ。波に揺られながら、2人の鼓動が響き合い、男女の愛、さらに生命への大きな愛を歌う。