◆縮む市場と地方経済の衰退
地方百貨店の閉店が続出している理由は複合した要因が考えられる。最大の理由は、人口の高齢化が進展し、主要顧客であった団塊世代の人たちが70歳代となり消費者層から退出し始めていることと、その次の世代は大幅に人口が少ないことがある。地方の百貨店は、この10年ほどは高齢者層を主要顧客として、いわゆる“年金経済”の恩恵を被ってきた。しかし、これが終わる。
さらに1970年代を中心に建設された建物の老朽化が進み、耐震基準に合わないことも大きな原因になっている。巨額の費用を投じて、改築あるいは新築しても費用を回収できるだけの売り上げを見込めない。
また、小売業においては、次第にネット通販の割合が大きくなっている。その分、実店舗での売り上げが落ち込むため、欧米では大手流通企業の倒産や廃業が相次いでいる。
「百貨店は、個人客に専門的な知識やサービスで売り上げを上げてきた外商のノウハウを今こそ生かして生き残るべきだ」という説もあるが、ある大手百貨店の従業員は、「それができるのは東京都心部に店舗を構える一部の百貨店だけ。地方の経済をけん引してきた中堅企業やその経営者たちに以前のような余裕はない。地方経済の衰退を理解していない」と嘆く。
◆街はどうあるべきなのか
相次ぐ百貨店の閉店は、百貨店だけの問題ではなく、街や都市の在り方を根本から問い直さねばならない問題である。
老朽化した百貨店が閉店し、その跡地に高層マンションと商業施設を入れるといった再開発の手法が採れる都市はまだ幸いである。中には、そうした新規投資に対して回収が危ぶまれ、再開発そのものが進まない都市も出始めている。
再開発によって人口を都市中心部に集約するというコンパクトシティ構想も、周辺市町村の反発や再開発されて分譲される物件の価格が高額であることなどから、見直しを迫られている。
旧来の商業集積地であるから、再活性化を図るべきであるという発想で進められてきた政府の中心市街地活性化策も始まってからすで20年が経過するが、成功事例がほとんどない状況である。
多くの都市で、集客施設として存在してきた百貨店が失われる──。これを後ろ向きに捉えるのではなく、これをきっかけに旧来からの延長線上での発想に決別し、新たな街の在り方から再検討する時期なのだろう。