仕事と真摯に向き合い、間違ったことは大嫌い。かといって杓子定規で融通が利かないわけではなく、同僚に向ける温かいまなざしをも持つ──そんなヒロインが活躍する「お仕事ドラマ」は、もはや定着した感がある。前クールでいえば、『わたし、定時で帰ります。』(TBS系列)がそうだった。その後釜ともいえるのが、7月26日にスタートしたNHKドラマ10『これは経費で落ちません!』(金曜夜10時、全10話)ではないだろうか。
本ドラマは、石鹸など衛生商品のメーカーである「天天コーポレーション」の経理部を中心に、主演の多部未華子が扮する経理部員の森若沙名子が、他部署の人たちに振り回されながらも仕事に恋に奮闘する物語だ。
ドラマや映画でなかなか扱われることのない「経理」という仕事を、コミカルなストーリーの中で紹介するのがこのドラマだ。経理とは、会社に出入りするお金の管理を行う部署。会計の一部を担い、会社に関係する「人・モノ・カネ」のうち、後者の2つと「人」の給与の部分も扱う。領収書の処理を行うだけでなく、かなり広範囲にわたる役割を担う仕事なのだ。
ドラマでは、経理部の中堅社員・森若が実直に社員の領収書の不備を指摘する場面が次々と展開されていく。接待後、自宅までのタクシー代を請求した社員に対して、「22時はまだ電車が動いています」と領収書を突き返す。その社員は「所属部長の承認印はもらえているのに、何でそんなこと経理が決めるんだよ!」とカンカンだ。
経理の仕事は、社員の不備や不正を指摘するばかりで損な役回りに思えてくる。いくつかの大手企業で経理職を長年務め、現在は「フリーランスの経理部長」として関連書籍を多く著している前田康二郎氏は、こう話す。
「経理は確かに融通の利かない、堅物の集まりのようなイメージはありますね。売上をつくる営業部員と違って褒められることもあまりなく、完璧にやって当たり前で、ミスしたときだけ怒られる。経営者からは、頑張ってはいるけど経理以上のことができるという期待はあまりされていないケースが多く、部員からすると一抹の寂しさはあります」