そもそも『あなたの番です』は、「連続殺人を起こしながら、数多くの怪しい人を終盤まで残しておかなければいけない」というジレンマを抱えた作品であり、それでいて「2クールに渡って視聴者を楽しませなければいけない」のですから、難易度は他ドラマの数倍高いと言っていいでしょう。
その点、当作は「毎週ラスト数分間で衝撃を与えて、次週への期待感を高める」という連ドラならではの魅力に加え、袴田吉彦さんを本人役で登場させて不倫ネタでイジる、清純派アイドルだった西野七瀬さんに「二階堂さんがしたいこと、されたいです」というセリフを言わせるなどのサービス精神が旺盛。
さらに、手塚翔太(田中圭)が歌う挿入歌『会いたいよ』に合わせて「殺された大切な人のことを思う」切ないシーンでホロリとさせるなど、緩急織り交ぜた構成で視聴者を飽きさせることなく終盤に持ち込むなど、スタッフの仕事ぶりが光っています。
本来、『あなたの番です』のような長編ミステリーは連ドラの華でした。しかし、2010年代に入ると、視聴率の取りやすい一話完結のミステリーばかりになって、視聴者の得られるカタルシスはスケールダウン。長編ミステリーのようなスケールの大きな物語は年2~3本程度まで激減していました。
それだけに「長編ミステリーの今後を左右する」という意味でも、『あなたの番です』にかかる期待は大きく、多くの視聴者を納得させる結末が待望されているのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。