毎週、驚くべき展開によってSNS上などで盛り上がりを見せる連続ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)。終盤に突入し、「結末へのハードルは上がっている」と指摘するのがコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんだ。そんななかで、制作サイドに求められていることとは? 木村さんが解説する。
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7月スタートの夏ドラマが佳境に入っている中、現在最も注目を集めているのは、4月から2クール連続放送している『あなたの番です』。放送前後にSNSへの書き込みが殺到しているほか、黒幕予想ページや「あなたの番です考察」ハッシュタグが飛び交い、ユーチューバーが考察トークライブを企画するなど、どの新作ドラマよりも盛り上がりを見せています。
あらためて4月のスタート時を振り返ると、「2クール連続放送」「30人超の俳優が出演」「毎週誰かが死ぬミステリー」という大がかりな仕掛けに、「無謀すぎる」「絶対に失敗する」という声があがっていました。
実際、序盤は視聴率6%台に低迷し、酷評も少なくありませんでしたが、中盤に入ると視聴率は10%前後を記録し、ネット上には熱狂的な声が続出。スタート時の大がかりな仕掛けに加えて、ダブル主人公の1人だった手塚菜奈(原田知世)が殺され、新たなイケメンバディ・二階堂忍(横浜流星)を投入するなどの思い切った策を次々に投入したことが功を奏しました。
終盤に突入した今、「どんな終わり方をするのか」という視聴者の期待感はピークに達しています。これ以上ないほどの大風呂敷を広げた結果、結末へのハードルは上がる一方。だからこそ制作サイドには、何が求められ、何をしてしまうと批判を受けるのでしょうか。
◆ミステリーで「これだけはダメ」な5つの結末
まず何が求められているのか?
ミステリーを手がける上で、「制作サイドに課せられる最低限のマナー」と言われているのは、最終回の放送終了後に、すべての謎が解けていること。
ここまで制作サイドは、30人超の主要キャラを用意し、全員に謎や問題行動などの怪しいところを入れました。つまり、黒幕はもちろん、それ以外の各キャラについても、謎や問題行動の理由を明らかにすることが求められています。
ただ、制作サイドにしてみれば、各キャラの謎や問題行動を早めに明かすと、黒幕ではないことがわかってしまい、黒幕候補が減ってしまうのがつらいところ。「ギリギリまで多くのキャラに怪しさをまとわせて視聴者に推理する楽しみを与えつつ、最終回が終わるまでに、謎や問題行動の理由を明かさなければいけない」という難しさを抱えているのです。
さらに制作サイドにしてみれば、「視聴者の考察合戦が想像以上に盛り上がった」という、うれしい誤算が発生しました。考察の中には、制作サイドが「驚かされる」と語っているように、用意していた脚本・演出にない説もあり、もはや「すべての説を回収しきれない」という状態になっているようです。それでもここまで考察合戦が盛り上がっている以上、「できるだけ視聴者の説を解明してモヤモヤを残さない」という努力が求められているのは間違いありません。
一方、何をすると批判を受けるのか?
現時点で最も危惧されているのは、ミステリードラマフリークの中で「これだけはダメ」とタブー視されている、「二重人格だった」「双子だった」「夢や妄想だった」「終盤まで未登場の人物が犯人だった」「続きは続編で」の5つ。
特に2年前に放送され、同じ秋元康さんが企画・原案として関わった『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)の「主人公が二重人格だった」という結末は、いまだに議論の対象となっているだけに、これだけは避けなければいけないでしょうし、幸いにも鈴間広枝プロデューサーはこの説を否定しています。
また、視聴者の考察合戦が盛り上がっているからこそ、「序盤、中盤の段階で最も浮上した“〇〇犯人説”が正解ではないほうがいい」のもセオリーのひとつ。ちなみに現在最も多く見られるのが、“黒島沙和(西野七瀬)犯人説”ですが、制作サイドにはこのような「多くの人々が序盤、中盤で分かってしまうような結末を避ける」ことが求められているのです。
その他で目立つのは、「“反撃編”のメインビジュアルに犯人がいる」という説。メインビジュアルには、手塚翔太、手塚菜奈、二階堂忍、黒島沙和、田宮淳一郎(生瀬勝久)、榎本早苗(木村多江)の6人が映されていますが、ここまで大風呂敷を広げてハードルを上げた以上、「この中に黒幕はいた」という単純な結末を上回ることが期待されています。
◆長編ミステリーの今後を占う責任は重大