〈某週刊誌に何枚か写真を撮られている……と友人から聞かされた。ありがちな芸能人ネタのスクープだったのか。私の事件をマスコミ関係者が既に入手していて、後々の大スクープのためにとっておいたのか〉
〈いままでこうした写真が世に出されたことは、一度もなかった。何らかの力が働いているからだろう〉
〈芸能人の友人が居たとして、自分が半グレだとしてもわざわざ素性を明かすわけがない。「情報筋」のリーク程当てにならないものはない〉
〈私達とは異なるデリケートな世界である故少しのことでも問題視される。今回も実際、私の逮捕を受け多大なご迷惑をおかけした芸能人が居る〉
宮迫との一件について匂わせながら、個人名は決して出さない。飲み会で金銭授受の事実はあったのかも明かされない。
金塊強盗劇の登場人物を実名で綴っていることに比べると、ディティールの乏しさが目立つ。野口は誰に配慮し、何を守ろうとしているのか──その疑問に最後まで答えることはなく、終章で手記を綴った理由について、こう説明する。
〈別に私は、えん罪だ!無罪だ!と声を大にして言いたい訳ではない。事実は事実として、真実は真実として発信をしなければ真の犯人達がのうのうと次なる犯罪へ手を染め又第二、第三の事件が起き被害者が出ることは火を見るよりも明らかだ〉
野口の口から、宮迫の一件について「真実」が明かされる日は来るか。
●取材・文/高橋ユキ(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2019年8月30日号