8月8日、国立がん研究センターは、2009年から2010年にがんと診断された患者57万例を集計した最新の「5年生存率」を発表した。
5年生存率とは、がんと診断された患者が5年後に生存している割合で、治療成果の目安となる。部位別(全期)にみると、5年生存率が最も高いのは前立腺がんの98.6%で、最低は膵臓がんの9.6%だった。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。
「前立腺がんと膵臓がんで生存率が10倍近く違うことからも、がんの部位やステージによって治療効果が大きく異なることが読み取れます。治療しやすいがんがある一方、死に至るがんもまだ多いのです」
ポイントは、部位やステージによって「治療内容」が大きく変わることだ。室井氏が続ける。
「これまでがんは『見つけたら切る』が常識でした。しかし今は生存率だけでなく、QOL(生活の質)を見据えた治療が求められるようになった。切除できたとしても、患者の術後の生活に大きな支障をきたすなら、開腹などの手術は避けるべきとの考え方が現われたのです。世界的にも、部位やステージによっては手術以外の治療法を選択する医師が増えています」
「切るべきがん」と「切ってはいけないがん」。その違いはどこにあるのか。
◆術後に生活が一変した
今回の発表で5年生存率が上位のがんほど、状態によっては手術が必ずしもベストの選択ではないケースが出てくる。昨年、胃がんのI期で全摘手術を受けたA氏(75)が打ち明ける。