スーパー、家電量販店、コンビニ……日本が築き上げた独自の小売りビジネスを、たった1社が呑み込もうとしている。いまやネット通販の枠を超え、「世界最大の小売り企業」となったアマゾンである。日本でも「アマゾンに業界が壊される」「行政が規制するべきだ」などの脅威論が叫ばれているが、その実態を知る者はあまりに少ない。かつてアマゾンに潜入取材したジャーナリストの横田増生氏が、再び内部に潜入。末端のアルバイトとして働くことを通じて、巨大企業の光と影に迫った。
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「とてつもなく大きくなったなぁ……」と気圧されるような思いに陥ったのは、2017年10月14日のことである。私がアマゾンの物流センター内部に足を踏み入れるのは15年ぶり。再度潜入した先は日本で一番大きな小田原の物流センターだった。そこでピッキング作業を開始したときの第一印象である。ピッキングとは、顧客が注文した商品を指示に従ってセンターの中から探してくる作業のこと。前回も同じだった。ただし、取り扱う商品は多種多様になった。かつてはほとんどが書籍だったが、今では、文房具から車用品、おもちゃや美容品まで、ありとあらゆる商品が、棚の中に詰め込まれていた。
私が『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影』を書くため、2002年の年末から約半年にわたり潜入したのは、千葉県の市川塩浜の海辺にある物流センターだった。2005年に書籍を出版したときまで、日本ではアマゾンジャパンに関するまとまった情報がほとんどなかった。私は約半年、アルバイトとして働きながら、物流センター内の作業工程や内部のレイアウト、人間模様などを細かく観察した。アルバイトの時給は900円で、契約は2か月ごとの更新という条件だった。