混迷を極める日韓関係だが、遡れば戦後の両国は、禍根を残しながらも複雑な国際情勢の中で関係修復に動いた。その背後で、カネと暴力、闇社会人脈を駆使してヤクザが暗躍していたことは、“公然の秘密”であった。近著『殺しの柳川』で、戦後日韓関係と裏社会の蜜月を描いたジャーナリスト・竹中明洋氏が、「ヤクザと韓国」の秘史をレポートする。(文中敬称略)
* * *
日韓関係の悪化に歯止めがかからない。
韓国側による慰安婦合意の反故や、海上自衛隊の哨戒機へのレーダー照射、徴用工判決が重なり、日本政府が半導体材料の輸出規制措置を取ると、韓国側は猛反発。日本製品の不買運動が行なわれ、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定。果ては東京五輪へのボイコットを求める声すら飛び出している。
この事態に元公安調査庁調査第二部長で、朝鮮半島情勢の専門家の菅沼光弘が嘆息する。
「よくも悪くも、日韓を裏側で結びつけた人々がいなくなった」
菅沼がいう「結びつけた人々」とは、政治家や外交官、財界人ではない。
町井久之や柳川次郎、高山登久太郎を筆頭とするヤクザだ。かつては彼らが日韓で軋轢が生じるたびに両国の間で暗躍した。その動きの一端を紹介する。