2019年8月8日からNetflixで配信されているドラマ『全裸監督』が大きな話題となっている。地上波ではできない大胆で過激な表現、ということばかりクローズアップされがちだが、実際にはどうなのか。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、事実に基づいてはいるがフィクションのドラマとして製作された『全裸監督』で、本当にチャレンジされているのは何なのかについて考えた。
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ソファーに座る山田孝之、玉山鉄二、満島真之介が画面の外にいるスタッフから何かを見せられる。満島が「これは山田さんが読んだ方がいいんじゃないですか」と言えば、カメラが山田にズームアップ。
「お待たせしました、お待たせしすぎたのかもしれません。なんと!シーズン2の製作が決定いたしました」
山田は劇中で演じたアダルトビデオ監督(以後、AV)村西とおる口調で『全裸監督』の続編が作られることをファンに報告。嬉々としてハイタッチする3人、映像が終わる瞬間に満島がこう言い残した。「あの日々に戻れる!」と。
わずか43秒間の映像である。しかし、これほど“役者冥利に尽きる”ことを俳優たちが表現している43秒間はない。3人のテンションを見れば、いかに高い熱量で『全裸監督』が作られたかがわかる。また、本編を観れば山田、玉山、満島が本作を愛する理由もわかる。
アダルトビデオ業界を描いているため、エロや過激さばかりがとりざたされる『全裸監督』。しかし、今作において尖った表現はさほど重要ではない。民放で深夜に放送されるドラマにも激しい作風ものはある。ただ、そのような作品は総じて制作費が低い。対して『全裸監督』は今まで扱われることが少なかったAV全盛の時代を豊富な制作費を使って表現している。似た作品がないといったことが重要なんだ。
出演者にインタビューをするプロモーション動画で「ドラマを絶対に観るべき理由」を聞かれた玉山は「他に絶対にないって作品ですかね」と答えた。『全裸監督』がオリジナルな世界観の構築に成功したことへの自信がうかがえる。
予告編のサムネイルでもある歌舞伎町を横並びで歩く3人のカットを観れば、作品の独自性が瞬時に理解できる。なんたって変! 左にオールバックにアロハを羽織ったチンピラ・トシ役の満島、右にスーツとフォーマルなスタイルで歩くブレーン・川田役の玉山、センターはピチピチのポロシャツに純白のパンツを合わせる村西役の山田。まるでアダルトビデオ業界の三銃士、『全裸監督』の登場人物に普通の人はいない。