今年は井上陽水がデビュー50周年ツアー、吉田拓郎も73歳での「LIVE73」、さらにアリスも古希を記念してのコンサートなど、往年の“フォークシンガー”たちの活動が話題を呼んだが、その彼らにとって先輩にあたる小室等もまだまだ健在だ。
1943年生まれ。1968年におもに芝居の劇中歌を担当するバンドとしての六文銭を結成。1971年の第2回世界歌謡祭では、ボーカルに上条恒彦を迎え『出発の歌(たびだちのうた)』でグランプリを獲得。この世界歌謡祭は後に中島みゆきの『時代』(第6回)、世良公則とツイスト『あんたのバラード』(第8回)などを世に送り出している。また上条とは翌年作曲した『だれかが風の中で』(ドラマ『木枯し紋次郎』の主題歌で作詞は市川崑夫人の脚本家・和田夏十)でもコンビを組んだ。
1975年に陽水、拓郎、泉谷しげるとともにフォーライフレコードを設立して初代の社長に就任。その風貌もあって、当時からすでに“長老扱い”を受けていたようだ。その後も映画やテレビドラマの音楽を担当したり、谷川俊太郎や佐々木幹郎など現代詩人とのコラボレーションを行ったりもしつつ、全国各地で地道なライブ・コンサート活動を続けてきた。今年の11月で76歳になるが、「毎日スクワットを欠かさず、駅ではいまでもエスカレーターではなく階段を上る」。
8月23日(金)、東京・大森の「風に吹かれて」で、六文銭時代のメンバーだった及川恒平とのライブ。「風に吹かれて」はオープンして今年で13年。オーナーは60年代から70年代にかけて活動したピピ&コットというフォークバンドのリーダーだった金谷あつし。ピピ&コットといえば、ケメこと佐藤公彦や『どうぞこのまま』の丸山圭子が在籍したことで知られている。店内に懐かしいレコードジャケットなどが飾られている、70年代の空気が感じられる「風に吹かれて」は、本来ライブハウスではなく、フォークソング好きが集まって歌ったり演奏したりする店だ。
及川恒平は1948年生まれ。六文銭には1970年ごろから参加。前述『出発の歌』や『面影橋から』をはじめ、名盤『キングサーモンのいる島』全10曲などの作詞を手がけ、作曲家としても才能を発揮。解散後はソロ活動を経て、阿久悠の事務所に所属して曲作りに専念していた。90年代半ばからライブ活動を再開。ソロ活動の傍ら、小室やかつてのメンバーだった四角佳子とステージに立つようになる。そのユニットには、現在小室の娘ゆいが「父の介護もかねて」参加、令和の時代の六文銭として活動している。