日本における冷凍食品の歴史は、日本人のライフスタイルの変遷と重なり合う。その出発点は99年前にさかのぼる。1920(大正9)年、葛原商会(現・ニチレイフーズ)が日産10トンの水産物を凍結する能力を持つ冷蔵庫を北海道森町に建設したのが、日本の冷凍事業の始まりとされる。日本冷凍食品協会の広報部長・三浦佳子氏は、冷凍食品の発展についてこう語る。
「1960年代に冷凍庫付き冷蔵庫が家庭に普及しだし、スーパーに冷凍食品売場も設置され始めました。現在の百花繚乱とも言える冷凍食品文化は、1980~1990年代の家庭用電子レンジの普及と各食品会社の努力を抜きには語れません。女性の社会進出が進んだ時期と重なり、新タイプの商品が次々と開発されました」
最もエポックメイキングになった商品は、1994年発売の電子レンジ対応コロッケという。
「それまで油で揚げていた冷凍コロッケがレンジでサクサクに出来上がる画期的な商品で、需要の構造を変えました。各社が追随し、お弁当用レンジ製品が一気に広まりました」(三浦氏)
2000年代に入ると、ヒット商品が相次ぐ中、個食スタイルの冷凍食品も増えていった。冷凍食品ジャーナリストの山本純子氏は消費者の“買い場”も多様化が進んでいると指摘する。
「コンビニやドラッグストアなど買い場は増加しています。弁当需要は横ばいですが、少子高齢化の流れの中、シニア向け、夕食向けに各社が注力しています。つまみ用など男性向けも増加。最近は健康に配慮した商品も相次いでいます」