平成以降最悪となった京都アニメーション(以下、京アニ)放火事件から1か月以上が経った。凄惨な事件の実態が少しずつ明らかになっている。
「7月18日午前10時半頃、京アニのスタジオに侵入した青葉真司容疑者(41才)が1階にガソリンをまいて火をつけた。わずか数十秒の間に3階建ての建物中に黒煙が広がり、従業員の目の前は真っ暗になったそうです。『火事だ!』という叫びや声にならない悲鳴の中、必死の思いでベランダにたどり着き、4~5mほどの高さを飛び降りて一命をとりとめた人もいます。とにかく黒煙の回るスピードが速く、生存者は『避難訓練や消火器はまったく役に立たなかった』と一様に口を揃えています」(全国紙社会部記者)
黒く煤けた外壁と焦げ臭さがいまだに残る現場近くには8月末まで献花台が設置され、多くの人が訪れた。京都市の36才女性が語る。
「6才の甥が大好きな映画『魔女の宅急便』の制作に京アニが参加していたことを先日知りました。甥が愛する作品に携わったかたがたに手を合わせたいという一心で、折り鶴を持ってきました」
中国から来たという52才女性も沈痛な表情でつぶやく。
「26才になる息子が京アニの大ファンなんです。今日は、『京都旅行をするなら献花してきてほしい』と息子に頼まれて、ここに来ました」
事件現場だけでなく、作品の舞台となった各地でも、悲しみに暮れる人々が集う。
「事件後は、ロケハン現場に置いてある交流ノートに記入するファンの数が3~4倍になりました。みなさん涙ながらにメッセージを残されています」(アニメ『たまこまーけっと』の舞台となった京都・出町桝形商店街の元組合理事長・井上淳さん)
反響は世界各地に及び、アップル社のティム・クックCEOや台湾の蔡英文総統らが哀悼の意を表した。日本からはミュージシャンのYOSHIKIや、お笑いコンビ・霜降り明星の粗品らが寄付を申し出た。8月16日時点で寄付額は19億9761万円に達するという。
政府は京アニ再建のため、同社や被害者への寄付について、税制面の優遇措置の検討に入った。異例の処置である。