伝統を重んじる日本舞踊界で、異色の舞踊家が注目を集めている。2歳で初舞台を踏み、21歳で五月流三代目家元を襲名した五月千和加さん(27/さつき・せんわか)だ。異色なのはそのルックス。本来、日本舞踊家は黒髪以外はご法度とされ、ピアスやラメなど「光り物」の使用も禁止されている。しかし、彼女は真っ赤な髪の毛にド派手なギャルメイクと奇抜なネイルで舞台に立っている。
日本舞踊といえば三味線などに合わせて踊るのが一般的だが、彼女は電子ピアノで奏でるディズニーの曲に合わせてミュージカル調で踊ったり、ある時はオーケストラとの融合を試みたりするなど、様々な楽曲が用いられている。
伝統を壊しているように見える五月さんだが、その裏では、幼少期から触れてきた日本舞踊への愛が溢れている。五月さんが言う。
「21歳で家元を襲名した時からこのスタイルを続けているのですが、この先の日本舞踊界に不安を感じたのがきっかけです。というのも、私達は日本舞踊協会に所属するのですが、舞踊家さんが、毎月20人近いペースで脱退しているんです。入会者も少なく、このままでは衰退しかねない。日本舞踊に注目してもらうために、この新しいスタイルを打ち出したんです」(以下同)
当初は反発もあったという。舞台に出演する際に、先輩たちから髪の色を変えろと言われ続け、「日本舞踊家らしく」と小言を言われたこともあった。それでも「日本舞踏のために」と決意は揺らがず、「年配の女性の舞踊家さんは白髪染めで紫なのに、紫がよくてなんで赤がダメなの」と自分の中で笑いに変えて頑張ってきたという。「赤髪のギャル家元」としてメディアに取り上げられ始めると、小言は減った。いまでは、少なからず普及に貢献できていると胸を張る。
そんな五月さんには意外な素顔がある。
「実は私、見た目とは違って中身は全然ギャルじゃないんです(笑い)。毎日夜の10時には寝ちゃいますし、朝は5時半に起きる。クラブは一回も行ったことがありません。日本舞踊に注目してほしい一心で、この格好をしているんです。赤毛をキレイに維持するのに、1回数万円かけて月に2回メンテナンスしてる。それが結構大変(笑い)」