今年の夏は前半は涼しい日が多かったものの、8月に入ってからは全国的に猛暑となった。「暑くて、麺を茹でるのすらつらい」。そんな夏に、そば、うどん、そうめん、冷し中華、など、あらゆる麺類が火を使わずに調理できる。そうしたニーズに応えるアイデアで、発売開始から31年間にわたるロングセラー商品となっているのが、水でほぐすだけですぐに食べられる生麺、シマダヤの「流水麺」だ。
流水麺シリーズの売上はここ5年にわたり右肩上がりが続いている(マーチャンダイジング・オン。RDS-POS調べ)。今年は長梅雨の影響で7月こそ伸び悩んだものの、8月以降の残暑で一気に巻き返し、足元の売り上げは絶好調の状況だ。流水麺の2019年3月期の販売数は過去最高の1億700万食。前期比でも20%増と急伸しているという。
「生麺・ゆで麺」のカテゴリー(JICFS分類に基づく全国ランキング)では、「マルちゃん焼そば」(東洋水産)が季節を問わず”絶対王者”として君臨するが、夏場となると様子はガラリと変わる。流水麺シリーズのシェアがそれを上回ることも多いのだ。近年、類似の後発製品も増えるなか、競合を寄せ付けず、圧倒的なシェアを誇っている。
発売30年以上を経過して、なお伸び続ける秘密はどこにあるのか。シマダヤの商品企画を担当している曽根田直基部長と菊池祐二氏に話を聞くと、“3つの要素”における激闘の歴史が見えてきた。
◆群を抜く“ほぐれやすさ”の裏側
流水麺を選択する消費者からすると、“手軽さ”は必要不可欠だ。火を使わず、水かスープでほぐすだけで食べられることから、小さい子どもがいて火を使いづらい主婦や、食事の支度を簡略化したい高齢者、また、単身赴任中の男性などにも人気だという。