「軟部腫瘍は整形外科の領域ですが、患者数が少ないことから、整形外科医の中でも精通している人は少数です。専門知識がある医師であれば、悪性腫瘍(軟部肉腫)である可能性も踏まえ、検査による出血などによってがん細胞を拡散させないよう配慮したり、適切な切除範囲を決定することができますが、そうでないとその後の生存率にも大きな影響を与えてしまいかねない」
柳澤医師が知るケースでは、過去に整形外科ではない医師が触診だけで“脂肪のかたまりだ”と判断し手術したが、病理診断で悪性腫瘍だと判明したことがあったという。この患者は再発と手術を繰り返し、転移を起こして6年後に亡くなった。
「腫瘍が悪性だった場合、治療としては手術を基本としながら放射線や抗がん剤を用いるなど、複数の選択肢の中から患者に合わせて適切なものを選んでいきます。
しかし、医師の中には“とりあえず切ろう”と見切り発車する人が少なくありません。もし場当たり的に切除した場合、その後何度も体にメスを入れることになり、肉体的に大きな負担を強いられ、ひいては転移をきたし、命が脅かされることにもなりかねません。
本来、手術前には必ず超音波、CT、MRIなどで画像診断を行なって腫瘍が良性か悪性かをきちんと判別したり、転移がないかどうかを確認したうえで手術をする必要がある。これらの手順を省きいきなり手術をするのは避けるべきでしょう」(柳澤医師)
かかる医師によって生死を分ける場合もあるというのだ。判断に迷う場合は、「総合診療科」で判断をあおぐ方法もある。症状が軽いうちに適切な処置を受けて、生活に「しこり」を残さぬようにしたい。
※週刊ポスト2019年9月6日号