音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、立川こしらと立川吉笑の二人会でネタ下ろしされたリレー形式の新作『前澤友作物語』についてお届けする。
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古典をネタに遊ぶ立川こしら、新作で論理を弄ぶ立川吉笑。異才2人が7月18日に国立演芸場で「伝統芸能鑑賞会~文月」という人を食ったタイトルの二人会を開いた。
開口一番はこしらの弟子かしめの『鈴ヶ森』。続くこしらが5分で『片棒』を聴かせ、吉笑が代表作の『ぞおん』(ゾーン状態に入って猛スピードで仕事をこなす番頭の噺)を演じた後、こしらと吉笑はリレー形式の新作『前澤友作物語』をネタ下ろしした。ZOZOの前澤社長が月の裏側で見つかったタイムマシンを手に入れて令和から江戸時代に跳ぶ噺だ(なお、登場する人物名、団体名はすべて架空のものである/笑)。
こしら演じる「上」は「先祖に会いたい」と夢を語って前澤がバラ撒いた百万円を手にするニートのエイト君が主役。吉笑演じる「中」で、彼は前澤や側近と共に1725年の江戸にタイムワープ、前澤は現代のノウハウで江戸の経済を牛耳る。狙いは未来世界での独り勝ちだ。
前澤は将来の黒船来襲に備えて湾岸の土地を買い占めるが、一軒の長屋が立ち退きを拒否。邪魔な長屋に前澤が嫌がらせをすると、住人は奉行の大岡越前に訴え、前澤は五兆両の科料を命じられた……ここでこしらに交代して「下」へ。
何故か史実より百年以上早く黒船が来襲。慌てた前澤は自分が未来人であることを奉行に打ち明け、湾岸に巨大レールガンを建設して黒船に立ち向かうが、なんと向こうにはジョブズが考案した防御フィールドが……というところで噺は終わる。