日本最大の暴力団、山口組が分裂してから4年が経とうとしている。六代目山口組から神戸山口組が分かれ、さらに神戸から任侠山口組が分裂し、「3つの山口組」が並存する“冷戦膠着状態”が続いていたが、突如として音が鳴った。この4年でもっとも危険な時期を迎えたと、暴力団取材のプロは見る。暴力団事情に詳しいフリーライターの鈴木智彦氏がレポートする。
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JR新神戸駅から徒歩10分、神戸市熊内の住宅街に、地域住民が“寮”と呼ぶ六代目山口組の中核団体・弘道会の関連施設がある。神戸市内のホテルが警察主導で連携し、暴力団の宿泊を拒否しているため、神戸入りした弘道会関係者のほとんどがこの施設に宿泊するからだ。
「新幹線の線路をまたぐ陸橋を渡って、坂を上っていくと、右手にジュラルミンの楯を連ねたようなイカつい外壁のビルが見え、その奥に日本家屋がある。これが弘道会の寮であることはみんな知ってます。あちこちの角にいつも見張りの車がいるので、こっちの顔を覚えられるんちゃうかと不安やったです」(近所に住む50代女性)
8月21日午後6時15分頃、その“寮”の前に、組員が乗る白い軽自動車が停車した。荷物と同乗者を下ろし、50メートルほど上にあるUターンスペースで車を転回しようとした。
そのとき、黒っぽい原付スクーターが上ってきて、軽自動車をパスして坂の上に消えた。ライダーは白っぽいフルフェイスのヘルメットをかぶり、黒っぽい鞄をたすき掛けしていた。