東京オリンピックの観戦チケット抽選販売に応募したけれど、1枚も当たらなかったという人が大半だろう。二次販売や、スポンサー企業による観戦チケットプレゼントなどチャンスはまだ残されているが、厳しそうだ。ところが、競技場へ入れなくてもVR(バーチャルリアリティ、仮想現実)によって生観戦するような、もしくは競技場では最前列よりも選手に近い臨場感たっぷりな観戦体験が可能になっている。そして、競技場ではAR(オーグメンテッドリアリティ、拡張現実)によって、目の前の試合をより充実して楽しめそうだ。ITジャーナリストの西田宗千佳氏が、VRとARの進歩と、5G普及でより魅力的になったスポーツ観戦の現在についてレポートする。
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VR(バーチャルリアリティ、仮想現実)やAR(オーグメンテッドリアリティ、拡張現実)といった技術が広がり始めている。一般家庭で皆が使う……とまではいえないが、技術や機器のコストも下がったことから、いかにビジネス化するかを模索する動きが広がっている。
特に活発なのがエンターテインメント。ゲームなどはわかりやすい例だが、コンサートなどのライブでも活用が進んでいる。中でもスポーツ観戦は、VR・ARにとって重要なジャンルだ。そして、特に注目されるには「5G」という別の要素もある。
5GによってスポーツとVR・ARになにが起きているのかを解説してみよう。
◆スタジアムに行けない人にはVR、スタジアムに行く人にはAR
スポーツを楽しむには、やはりスタジアムに足を運ぶのが一番だ。テレビ中継ではカメラ越しに「いいところに注目できる」「快適な自宅で見られる」という利点があるが、現場の盛り上がりの雰囲気や、テレビカメラでは難しい視野での視聴など、良い所がたくさんある。
だが、スタジアムに行ける人は限られている。そうでない人にも、スタジアムの興奮を楽しむ方法はないものだろうか?
そこで出てくるのが「VR」だ。視界をディスレイで覆い、自分が向いた方向に合わせた映像を見せることで、自分が見ているものを「映像」に置き換え、現実に近い印象を与える。
これは、スポーツとの相性が良い。自分がスタジアムにいる時と同じような体験ができるからだ。
いや、実際には、スタジアムの観客席とも違う体験ができる、といった方が正しい。
画像は、筆者が2018年7月に、サッカーのインターナショナル・チャンピオンズ・カップ(ICC)を「VR観戦」した時の映像だ。ピッチのすぐ近くにカメラが設置され、観客席より近い位置から試合が見られる。画像の解像度が低く、背番号などのディテールが見づらい、という欠点はあるが、迫力や臨場感はなかなかだ。